ドコモが住信SBIネット銀行を2336億円でTOB。NTTがSBIに1100億円出資する複雑な資本業務提携の狙いとは

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住信SBIネット銀行は、ドコモが求める先進技術を備えていた。まず、日本初のAI完全与信システム。住信SBIネット銀行の円山法昭社長によれば「日本の金融機関で初めて、そして唯一、AIによる完全与信の住宅ローン審査システムを完成」させ、すでに多くの金融機関にサービス提供している。住宅ローン実行額は日本の金融機関でナンバーワンのシェアを獲得。

さらにBaaS(Banking as a Service)でも先行する。新規顧客獲得の70%がBaaS経由という実績は、ドコモの法人ネットワークと組み合わせることでさらなる拡大が期待できる。預金残高は約10兆円規模。ネット専業銀行として国内最大級の規模を誇る。まさにドコモが求める「軽くて先進的な」銀行だった。

売り手であるSBIホールディングスの北尾吉孝会長の決断も興味深い。住信SBIネット銀行は、SBIと三井住友信託銀行の合弁で2007年に開業。2023年には株式公開を果たした優良資産だ。なぜ売るのか。

「NTT、ドコモさんから非常に関心を示された。その関心にどう答えるべきか私自身も考えた」

北尾氏は売却理由を2つ挙げた。創業以来育ててきた住信SBIネット銀行が株式公開を果たし、1つの区切りを迎えたこと。共同出資者である三井住友信託銀行の意向確認が必要だったこと。「三井住友信託はOKということでした」と北尾氏。

だが最大の理由は別にあった。SBIグループは2022年に新生銀行(旧日本長期信用銀行)を子会社化している。総資産規模も大きく、リテールから法人まで幅広い金融サービスを持つ新生銀行。グループ内で2つの銀行を維持するより、新生銀行に経営資源を集中するほうが効率的。そう判断したのだ。

SBI
SBIはSBI新生銀行に経営資源を集中しつつ、住信SBIネット銀行との関係性も維持する方針だ(筆者撮影)

SBIは公的資金の返済とメディア事業に投資

住信SBIネット銀行の売却代金とNTTからの出資で、SBIは巨額の資金を手にすることになる。北尾氏は記者会見で「(SBIは)つねに金が足らない会社でして、今もすでに買収案件が2件ぐらいあります」とカラッと語った。その背景には2つの大型資金需要がある。

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