ドコモが住信SBIネット銀行を2336億円でTOB。NTTがSBIに1100億円出資する複雑な資本業務提携の狙いとは
KDDIは2025年1月に「auじぶん銀行」を完全子会社化。三菱UFJ銀行との合弁を解消し、100%子会社とした。ソフトバンクは「PayPay銀行」(旧ジャパンネット銀行)を2021年から傘下に収めている。楽天は携帯事業では後発だが、楽天銀行を中核とした「楽天経済圏」で他社を圧倒する。携帯大手4社で唯一、銀行を持たないドコモ。この「空白」は明確な弱点だった。

前田社長は銀行業参入で実現する4つの目標を挙げた。第1に、スマートフォン1つで貯金、決済、投資、保険、融資、ポイントまで完結する金融サービスの提供。第2に、銀行データを活用した最適なサービス提案。第3に、銀行機能による顧客基盤の強化。第4に、ドコモの販売チャネルを通じた金融事業の成長加速だ。
銀行は単なる金融サービスの1つではない。顧客を囲い込み、データを活用し、収益を拡大するための「インフラ」。それがドコモの出した答えだった。
なぜ住信SBIネット銀行を選んだのか
面白いのは、質疑応答での記者とのやり取りだ。記者は過去の決算会見でNTT側が「通信事業者にとって必要な銀行機能は限られている」と発言していたことを指摘。「ふたを開けてみると、フル機能の銀行をグループに入れることになった。方針転換か」と問いかけた。
NTT島田明社長の答えは明快だった。「基本的にはトランザクションができて、いらないものはいらない。いらないと言ったのは店舗だとか、ATMだとか、そういう重たいものはいらないと申し上げたわけで、住信SBIネット銀行が持っているものは銀行の機能として必要なものなんですよね」。
島田社長は「帯にもなるし襷にもなるベストなソリューション」と表現。2月の決算発表で自身が語った「帯に短し、襷に長し」という銀行選びの難しさを、見事に克服できたという手応えだった。

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