(このひとに5つの質問)デービッド・L・スタルブ アーンスト&ヤング企業不正対策・係争支援(FIDS)部門責任者

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(このひとに5つの質問)デービッド・L・スタルブ アーンスト&ヤング企業不正対策・係争支援(FIDS)部門責任者

J‐SOX導入は第一歩 踏み込んだ不正対策を

企業不正発覚に伴うペナルティは世界的に重くなる一途だ。国際会計事務所の不正防止サービス責任者に、企業不正の動向と対応策の必要性について聞いた。


1 企業不正の世界的な潮流はどうなっていますか。

 われわれはFIDS(企業不正対策・係争支援)チームが中心となり、世界の代表的な500社超の企業を対象に、2006年に第9回目のアンケート調査を行った。03年の調査(第8回)時点と比べると、企業の内部統制に対する取り組みが大きく進んでいることがわかっている。かなりの人的資源を投入することで、企業は不正の予防と発見で相当の成果を上げている。
 一方で、不正の数が減少したことを示すデータはほとんど見つからなかった。われわれがインタビューをした中で、過去2年間に重大な不正行為を経験したと回答した企業は5社中1社に上っている。また、回答企業のうち4割超が、文書化された不正対策を導入していないという事実も判明している。

2 企業不正へのペナルティは重くなる一途だといわれます。

 欧米では量刑が重くなるとともに課徴金が高額化していることは事実だ。世界の規制当局の汚職防止に対する関与は確実に強まっている。OECD贈賄防止条約の採択とともに、ほとんどの欧州諸国の政府機関が、汚職に関する調査を行う法的な権限を持つようになっている。

3 粉飾決算や食品表示の偽装など、わが国でも不祥事が相次いで表面化しています。実例からどのような教訓を得られるでしょうか。

 経営者は文書の中だけに存在する「机上のプログラム」では役に立たないことを認識すべきだ。ルールに従った業務を行うには、経営者の正しい姿勢と現場での不断の取り組みが求められている。

4 この4月に始まる会計年度から上場企業で導入されるJ‐SOX法(日本版内部統制制度)は、不正防止にどの程度の効果を期待できますか。

 不正対策への対応は経営者の責務で、(内部統制の枠組みを定めた)J‐SOX法は不正防止の取り組みの第一歩にすぎないととらえるべきだ。また、日本国内のみならず、中国など海外での汚職に目を配るなど、リスクのあるところへより多くの経営資源を投じるべきだ。

5 アーンスト・アンド・ヤングでは、日本でのビジネス展開をどう考えていますか。

 われわれのメンバーファームである新日本監査法人は、昨年10月に国内大手監査法人として初めて、企業の不正防止を支援する専門部署を設立した。
 不正が表面化した後の調査など事後的な対応に関するサービスにとどまらず、当社が開発した専用のプログラムの提供を通じた不正の事前防止への取り組みを、新日本の専門チームとともに支援していきたい。
(週刊東洋経済:岡田広行記者 撮影:尾形文繁)

David L. Stulb
1954年、米国マサチューセッツ州生まれ。米海兵隊、CIAを経て公認不正検査士の資格取得。デロイト・トウシュ、アーサー・アンダーセンを経て、2002年12月にアーンスト&ヤングに移籍。

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