「”箱ごとレンチン”前提で開発」全国約30箇所にある《ハンバーガーの自販機》。『自動車整備工』の女性が”自販機ビジネス”を始めた理由

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オートレストランのように、レトロ自販機をメンテナンスしながら使っているのではなく、新しい自販機の導入と商品となるハンバーガーの卸販売を手がけているようだ。連絡をとって訪ねてみると、そこは「ガレージいじりや」という自動車整備工場だった。工場内では1960〜1970年代に製造された数多くの旧車がメンテナンスを受けていた。

「ガレージいじりや」外観。スズキの販売店として新車の販売も行っている(筆者撮影)

「旧車専門というわけではないのですが、口コミで評判が広がって、全国から旧車好きのお客様が訪れてくださいます。実はハンバーガー自販機も旧車がきっかけでした」と話すのは、「ガレージいじりや」のオーナー、小林由季さんだ。

小林さんは自動車整備工場でメカニックとして6年間働いた後、2010年に独立して「ガレージいじりや」を設立した。ある日、スタッフの一人が自動車の歴史に名前を残す名車、スバル360を修理して、車検をクリアした。

同じメカニックとしてそれが悔しくて、自分も旧車を修理してみたいと思い、10年ほど前に1972年に製造されたマツダ・シャンテを購入した。調子の悪い箇所だけを修理するのではなく、車全体のバランスを考慮して少しでも長く乗ることができるようにメンテナンスをしているうちにマツダ・シャンテがとても愛おしく思えた。

「街中をマツダ・シャンテが走っていた1970年代はどんな時代だったのだろうと思いを馳せるようになり、花柄のグラスから始まり、お皿やポット、洋服など昭和レトログッズのコレクションが増えてきました」(小林さん)

自販機バーガーの製造業者の力になりたい

小林さんは旧車とは別にスズキのアルトワークスのオーナーでもあり、2011年から全国のアルトワークスのファンが一堂に会する「あると祭」を毎年開催している。その様子や、小林さん自身のカーライフをクラシックカーの専門誌「ノスタルジックヒーロー」(芸文社)が紹介したことをきっかけに、編集者との親交が始まった。 

「ガレージいじりや」のオーナー、小林由季さん。現在は個人事業だが、今年7月には法人化する予定とか(筆者撮影)

2019年12月、小林さんがマツダ・シャンテで全国のレトロ自販機を巡る「軽旧車で行くレトロ自販機の旅」が「ノスタルジックヒーロー」の誌面を飾った。単発の企画だったが、読者からの評判が良く、次号から連載企画としてスタートした。連載3回目から自前のレトロな衣装に身を包んだ小林さんが誌面に登場すると、ますます人気が出た。しかし、全国のレトロ自販機を訪ねる中、オートレストランが抱えている問題に直面した。

「レトロ自販機は壊れたら簡単には修理ができないので、廃業を余儀なくされるオートレストランも出てくると自販機の中に入れるハンバーガーを作っている業者さんが困るわけです。そのハンバーガーをウチが売って業者さんを助けることができないかと思ったんです」(小林さん)

当初は手売りすることを考えていたが、「ガレージいじりや」で売ったとしても常連客が買うだけでわざわざ買いに来る客は少ないと思い直し、やはり自販機で売ることにした。とはいえ、レトロ自販機は電子レンジを内蔵していることから、設置場所が屋内に限られるため、新品または中古の自販機を改修して使うことにして、2020年8月に「ガレージいじりや」前に自販機コーナーを設置した。

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