「”箱ごとレンチン”前提で開発」全国約30箇所にある《ハンバーガーの自販機》。『自動車整備工』の女性が”自販機ビジネス”を始めた理由

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ハンバーガーの自販機。自販機本体の色使いもどこか懐かしさを感じる(筆者撮影)

レトロ自販機のようにその場で食べることができないと思いきや、自販機コーナー内には電子レンジが置いてあり加熱することができる。

「当時はコロナ禍で餃子や焼肉、ラーメンなどの自販機が注目を集めていたこともあって、ハンバーガー自販機の復活はテレビやネットでも紹介されました。反響は大きく、月間600個を売り上げました。自販機を置かせてほしいという問い合わせも数多くいただき、販売店も増えていきました」(小林さん)

ところが、最初の頃は業者も喜んでいたものの、だんだんと納期が遅れるようになり、とうとう『生産が追いつかないからやめたい』と告げられた。とはいえ、販売店は自販機を空にできない。矢面に立たされた小林さんは販売店に頭を下げてまわった。ハンバーガーは自分で作るしかないと思って、工場の物件探しから契約、厨房機器や冷凍庫、冷蔵庫の購入、食品製造の許可取得やスタッフの採用など20日間あまりですべて整えた。それが「いじりやフードサービス」である。

レンジ加熱を前提とした制限の多い商品開発

この日、ハンバーガーの工場も見学させてもらった。冒頭で触れたX(旧Twitter)の「ハンバーガー自販機本部」のアカウントを管理しているスタッフとパートの2人で手際よくバンズにソースを塗ったり、バンズをサンドしたりしていた。完成したハンバーガーは、マイナス20度で急速冷凍した後に販売店へ納品されるという。賞味期限は冷凍で2カ月、解凍後は1週間とか。 

「いじりやフードサービス」のスタッフが一つ一つ丁寧に作っている(筆者撮影)

販売店によって異なるが、自販機バーガーは1個300円〜400円。定番のチーズバーガーやてりやきマヨバーガーをはじめ、ワッフルや大判焼き、パンケーキも含めて全部で13種類。そのうち2種類のハンバーガーが季節ごとに替わる。夏場には「ねぎ塩だれバーガー」と「夏野菜レモンバーガー」が登場する。大手ハンバーガーチェーンでは見かけない商品と出会うことができるのも魅力だ。

チーズバーガーを試食させてもらったところ、まず、その大きさに驚いた。昔食べた自販機バーガーはもっと小さかったような気がする。聞いてみると、バンズのサイズは大手ハンバーガーチェーンとほぼ同じだという。

箱ごとレンジで温めるせいか、バンズは蒸されてしっとりとした食感。パティも分厚くて食べ応えも十分だった。自販機のうどんやラーメンと同様にむちゃくちゃおいしいというわけではないが、「これっ!この味!」という懐かしさが込み上げてくる。

 「チーズバーガー」(350円)。しっとりとした食感のバンズと厚みのあるパティが特徴だ(筆者撮影)

「バンズも箱の中で蒸されることを計算して、あえてグルテンの量が少なくて、歯切れのよいものを選んで使っています。自販機バーガーはレンジで加熱することが前提ですから、生の野菜を使うことができませんし、香辛料を入れても温めると風味が飛んでしまうんです。制限の多い中で商品を開発するのは大変でしたが、私自身が納得できるものが完成したと思っています」(小林さん)

現在、いじりやフードサービスのハンバーガー自販機は、北は宮城県から南は福岡県まで29カ所に設置されている。週末は自販機バーガーを食べることを目的にドライブやツーリングを楽しむ人もいて、順調に売り上げを伸ばしているという。

懐かしいだけでなく、自販機用に計算され尽くした小林さんの「自販機バーガー」。異業種から参入してまだ5年、今後もっと広がる可能性を秘めている。

永谷 正樹 フードライター、フォトグラファー

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ながや まさき / Masaki Nagaya

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。

地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに記事と写真を提供。

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