日本とは大違い、欧州鉄道「大型荷物置き場」事情 スーツケースからスキーまで収納スペース確保

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欧州在住の筆者は、日本から渡航する個人旅行者に何度も「列車の荷物置き場を予約する必要はありますか?」と聞かれたことがある。

笑って否定したくなるが、そう尋ねる人の多くが、「新幹線車内で、インバウンド客の荷物で嫌な思いをした」とか、「自分が大きな荷物を持ち込もうとしたが、荷物スペースのほうが満杯で乗りたい列車に乗れなかった」という辛い体験談が返ってくる。そんな“トラウマ”を持つ人なら、慣れない欧州の列車で「荷物のことで車掌や他人と揉めるのは嫌」と考えるのも当然だろう。

TGV 荷物スペース
2階建てTGV車内下層の荷物スペース(筆者撮影)

英仏間などを結ぶ国際高速列車「ユーロスター」はコロナ禍前まで、特大荷物の運搬について、航空機と同じような形で「バゲッジチェックイン」(受託手荷物)のサービスを有料で実施していた。駅の所定の場所に行き、手続きを済ませばほぼ手ぶらで乗り込むことができた。

このサービスがなくなった今では、毎便のようの「荷物置き場スペース」の争奪戦が起きている。だが、運行会社は新たな施策を打ち出していない。とりあえずは「乗客間で“話し合い”でもして取りまとめる」ことを期待しているのだろう。

日本は荷物スペース自体が少ない

筆者の感覚では、欧州においては「荷物置き場がいっぱいで困る」といった事態に遭遇することはあまりない。スーツケースとベビーカーを持って家族連れで旅行するといった人々は、あえて車いす用のスペースに自席を取って(空いていれば健常者でも予約可能なことが多い)空いている床に荷物を積み上げるといった光景をよく見る。

欧州でも“カオス”は起こらないわけではない。最も混沌とした体験の一つは、フランス北部でベルギー国境に近いリール駅から、パリのシャルル・ド・ゴール(CDG)空港直通の早朝発TGVに乗ったときだ。

乗客は全員スーツケース持参で、ラックも荷棚も埋まり、ついにはドア横のデッキに積み上げる事態に。幸い途中駅がなかったため問題は顕在化しなかったが、到着時には荷物がホームに転げ落ちるという光景が展開された。

しかしこれは例外だ。普段は十分な荷物収容スペースという「構造」があるからこそ、予約も説明も必要ない自由が成り立っているのである。

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