マイナンバー、国の配慮ない姿勢に異議あり なぜコールセンターが有料でしかも高いのか

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特に企業は、従業者と扶養家族の個人番号収集や、社内規程の作成、マイナンバーの記録台帳の整備、情報漏えい対策、社内の安全管理措置などやらなければならないことが多岐にわたる。大企業は昨年より準備を進めてきているが、多くの中小・零細企業では、個人番号通知カードが従業者世帯に届くこれからといった状況だ。

今どき信じられないが、パソコンがない企業もあり、相談相手は顧問の税理士や社労士に頼っている所も少なくない。士業の人たちも手探りで勉強しながら顧問先に対処しているのが実情である。特に士業は一人事務所であっても、大企業並みの安全管理措置義務を課されている(中小企業の軽減措置の対象外)ため、顧問先の指導だけでなく、自らの事務所の安全管理の体制を作らなければならない。

特定個人情報(マイナンバー)の取り扱いに関するガイドラインを参照しつつも、実際の運用面で多くの疑問や悩みが出てくるのは仕方がないことで、Q&Aも用意されているが、まずは電話で相談というパターンが多いと考えられる。その電話内容も企業の個別実情があり詳細にわたるから、対応時間を要する。コールセンターの担当者もすぐに答えられない場合もあり、いっそう電話の時間が長くなる。

なぜ相談者がおカネを負担しなければならないのか

現在、マイナンバー法が施行されてから1週間経ったが、今後電話相談が一層増えると予想される。個人番号通知カードが各世帯に届き始める20日過ぎからは、個人からの問い合わせも多くなるだろう。

そうだとすれば、なぜ国の都合で進めるマイナンバーについて、国が運営するコールセンターが有料でないと利用できないのかという疑問が沸いてくる。昨年10月から始まったコールセンター業務も、ちょうど1年経つ。見直す余地はないのだろうか。

この点を問い正すため、内閣官房の社会保障制度改革室に電話をしたら、担当者は「苦情電話が増えている」ことを率直に認めた。「無料化の検討はしているのか」と聞いたら「マイナンバーコールセンター業務は2016年9月30日まで。入札で決めたことであり、いまさら無料化の変更はできない」という趣旨の返答だった。ただ、国の関係者の中には「個人的には無料にすべきと思う」という声もある。

そもそもマイナンバー対応で、企業や士業が支払うコストは、国ではなく企業や士業自らが負担している。国がマイナンバーを推進普及させたいならば、国民や企業の協力を得なければ進まない。にもかかわらず、単に有料というだけでなく相対的に割高な通話料を国民に負担させるのは、配慮がなさすぎる。

田淵 義朗 ソーシャルメディアリスク研究所代表、マイナンバー総合研究所代表

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たぶち よしろう / Yoshiro Tabuchi

神戸市出身、中央大学法学部卒業。情報セキュリティコンサルタント。宝島社(JICC)に勤務後、独立。主に個人情報とプライバシー、マイナンバー、情報漏えい問題を中心に執筆、講演等幅広く手がけている。マイナンバー総合研究所代表としては、現在、士業(会計士、税理士、社労士)対象に、無料ガイダンスを毎週土曜日実施中。http://www.mylab.com

ソーシャルメディアリスク研究所では、「不幸な人と企業を出さない」ことをミッションに、ソーシャルメディアトレーニング、コンプライアンス研修を行う。ロックバンドUNISON SQUARE GARDENの田淵智也は息子。 https://www.facebook.com/ytabuchi

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