米国の尻込み状態は憂うべきことなのか--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト

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ところが、日本も欧州も、自らの役割を果たす用意ができていないように思える。それは一部には、過去何十年間にもわたり米国による安全保障に依存してきたからだ。米国が世界の警察であり続けるかぎり、その庇護に甘んじてきた国々は成長しない。

それはともかく、イラクやアフガニスタンで経験してきたように、「平和のための厳しい戦争」が最も効果的な外交政策だとは必ずしもいえない。時代遅れの軍事的優位は、もはや米国の国益追求にとって適切ではない。中国は着実にアフリカ諸国への影響力を強めつつあるが、それは軍事力によってではなく、カネの力によってだ。一方、米国は武器を提供することで中東の非宗教的な独裁者を支えてきたが、これがイスラム教過激派の誕生につながった。無人爆撃機を増強するだけでは、過激派を打ち負かすことはできない。

ロムニーやその支援者たちは、米国の軍事力のみが世界の秩序を維持できる、と主張するが、これは極めて復古的な考え方であり、冷戦時代へのノスタルジーだ。

オバマ大統領が米国の限界を認めるのは、臆病な悲観主義の表れではなく、むしろ現実的な知恵を示すものだ。オバマ大統領が中東問題で比較的慎重な姿勢を取っていることで、中東の人々は自ら行動できるようになった。その結果がどう出るかはまだわからない。しかし、「地球上で最も偉大な国家」が解決策を押し付けることは不可能であり、またそうすべきでもないのだ。

Ian Buruma
1951年オランダ生まれ。70~75年にライデン大学で中国文学を、75~77年に日本大学芸術学部で日本映画を学ぶ。2003年より米バード大学教授。著書は『反西洋思想』(新潮新書)、『近代日本の誕生』(クロノス選書)など多数。

(週刊東洋経済2012年3月10日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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