米国の尻込み状態は憂うべきことなのか--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト

ベンガルの知識人、ニラード・C・チョードリはかつて、英国によるインド統治が終焉を迎えたのは「funk」(尻込み)つまり無気力が原因だった、と解釈した。英国人が大英帝国の正統性を信じなくなったからだ、というのだ。ラドヤード・キップリングの有名な言葉を借りれば、英国人は「平和のための厳しい戦争」を戦う意思を喪失した、ということだ。

チョードリの指摘は核心を突いている。必要に応じて軍事力を行使する意思なくして、帝国は維持できない。今の米国では、「米国は危険な尻込み状態に陥っている」との認識が広まっている。

たとえば、共和党のミット・ロムニーは、オバマ大統領は米国の国際的なパワーを詫び、米国が地球上で最も偉大な国家ではないことをあえてほのめかし、物の見方が悲観的である、と酷評している。それと対照的に、自身は米国の偉大さと国際的なパワーを回復させると約束し、そのためには軍事力の増強が必要だと主張している。

ロムニーにとってキップリングの役割を担うのが、ネオコン(新保守主義)の知識人、ロバート・ケーガンだ。彼は近著『The World America Made』の中で、「米国の衰退という神話」に異議を唱えている。ケーガンは中国の国力増大は認めつつも、米国の優位はいまだに圧倒的であり、米国の軍事力はいかなる挑戦者に対しても「間違いを正す」ことができると述べている。米国のパワーにとって差し迫った唯一の危険は衰退主義、つまり自信の喪失であり、「第2次世界大戦以降(米国人が)負担し続けてきた精神的・物質的な重荷から逃れたい」という思いであり、これは一言で言えば「尻込み」だということになる。

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