しかし、牝馬は海外に売る必要はないし、売ってはいけない。繁殖牝馬とは、その現地の血の基礎となるものであり、門外不出の血となるべきものである。
優秀な繁殖牝馬こそ競馬界の至宝、本来のあるべき姿に
だから、牝馬を海外に売ることは必要ないし、その血の世界市場価格を高くする必要もない。つまり、牝馬は海外遠征する必要もないし、さまざまなリスクを考えれば、するべきではないのである。牡馬とまったく逆なのである。
それゆえ、実は3歳のクラシック戦などで能力を示した牝馬は即刻引退すべきなのである。牝馬の古馬のレースが相対的に少ないため、近年一口馬主を中心とする幅広い馬主やファンからの要望で増やしているが、それは実は間違いなのである。
例えば、和田共弘オーナー(シンボリルドルフなどのオーナーブリーダー)が1985年にスイートナディアを2歳(当時は3歳と数えていた)で引退させたのは、そういう考え方に基づく。
また前出の吉田善哉などはシャダイソフィアを5歳(当時は6歳)まで走らせ、同じ1985年、レース中の事故で安楽死させてしまい、一生後悔し続けた(同氏の棺にはシャダイソフィアの鬣が納められたという)。だから、香港競馬のように、生産とは無関係なレースの興行主体は、騙馬の出走を広く認めている。しかし、香港を舞台に長期間無敵を誇ったロマンチックウォリアーがどんなに強くても、騙馬である以上、競走馬の歴史には残らないし、そこまでの価値はない。
優秀な繁殖牝馬こそ、どんな種牡馬よりも重要な競馬界の至宝である。海外遠征だけでなく、牝馬古馬への考え方を、本来のあるべき姿に戻すべきである。
さて、天皇賞(5月4日に京都競馬場で行われる芝コース3200メートルのレース、G1)。うれしいことに牝馬の出走はない。ここは、種牡馬としての価値を最後に高められるかどうか勝負どころの、ジャスティンパレス(7枠13版)とブローザホーン(2枠3番)。ともに血統は申し分ないので、もう1つ、G1の勲章をどちらかに与えたい。
※ 次回の筆者はかんべえ(双日総研チーフエコノミスト・吉崎達彦)さんで、掲載は5月10日(土)の予定です。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら