「同盟に近いパートナー」って何? 石破茂首相のフィリピン訪問で新聞各紙「準同盟」で足並みそろえるが、日本に有事の覚悟はあるか

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今回の石破氏の安保関連発言でも、現地メディアで批判的な論調はほとんど見られない。国民の間からも「有事になれば日本が助けてくれる」「アメリカがダメなら日本が」といった期待の声が聞こえる。首相自ら「同盟に近い」と言えば、期待はさらに高まるだろう。

各種世論調査で対日好感度は世界最高水準だ。南シナ海で「いじめ」を続ける中国への嫌悪の裏返しという面もある。

政府の説明そのままの社説

フィリピン側の期待の強さと裏腹に日本では日比安保協力に関する国民の認知度は極めて低い。国会でまともに議論された形跡もない。南シナ海での紛争が自らに関わるかもしれないと認識している日本人がどれほどいるだろうか。

関心を持つ人は、ステークホルダーにほぼ限られている。外務省や防衛省の関係者や担当記者、安保を専門とする学者、装備品を納入する企業関係者らだ。日比安保協力の進展により、直接的、反射的な利益を得る人たちである。省庁は予算がつき、会社は売り上げを計上できる。研究費や旅費も支給される。

メディアの責任は重い。首相が「同盟に近いパートナー」と定義したとき、その中身を問い質したようには見えない。各社の社説を読んでも、中国に対抗するうえで日比防衛協力は重要だという政府の説明を批判的に検証することなく、そのまま垂れ流している。そう私には読める。

新聞各社は自らが使う「準同盟」の定義をはっきりさせてほしい。そのうえでフィリピン有事の際に日本がどう関わるべきか、社説で考えを明らかにしてもらいたい。

柴田 直治 ジャーナリスト、アジア政経社会フォーラム(APES)共同代表

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しばた・なおじ

ジャーナリスト。元朝日新聞記者(論説副主幹、アジア総局長、マニラ支局長、大阪・東京社会部デスクなどを歴任)、近畿大学教授などを経る。著書に「ルポ フィリピンの民主主義―ピープルパワー革命からの40年」、「バンコク燃ゆ タックシンと『タイ式』民主主義」。

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