「同盟に近いパートナー」って何? 石破茂首相のフィリピン訪問で新聞各紙「準同盟」で足並みそろえるが、日本に有事の覚悟はあるか

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台湾有事と違ってフィリピン有事はほとんど使われていないが、一触即発という意味でより緊張状態にあるのは南シナ海の方だ。

南シナ海の最前線で中国船と対峙するフィリピン沿岸警備隊の艦船のほとんどは、日本が政府開発援助(ODA)で供与した巡視船だ。

これが中国船の体当たりで沈没したり、死者が出たり、あるいはアメリカがMDTを発動して戦争状態になったりした場合、さて日本はどうするか。集団的自衛権の行使を可能にした2016年施行の安保関連法で規定されている「重要影響事態」にあたるのか。「存立危機事態」と認定する可能性はあるのか。

有事に際して何もしない、肝心の時に支援しないのであれば「準同盟」、あるいは「同盟に近いパートナー」などと言うのはおこがましいだろう。日本政府に、石破首相には、言葉倒れにしない覚悟があるのか。

フィリピンとの安保協力は日本の国益に資するか

私は、南シナ海における中国の傍若無人な振る舞いを非難する日本政府の立場を支持している。

だからといってフィリピンに軍事的に肩入れすることが日本の国益に合致するとも思っていない。日比協力はあくまで経済やインフラ、保健、教育など戦後長らく培ってきた分野に重点を置くべきだと考える。現在の日本の国力からすれば、支援は対象分野を絞り効率的な運用が求められている。

百歩譲って安保協力を是としたとしても、「準同盟」や「同盟に近いパートナー」といった言葉遣いは不用意に過ぎると危惧している。

フィリピンでは、政府のみならず国民の間でも日本の安保協力に対する期待は大きいと感じる。

フィリピンのメディアではリベラル系や左派系を中心に20世紀中は、日本の自衛隊の動きや防衛予算について批判的に報じる傾向があったが、最近では「かつての敵が信頼できる味方に」といった見出しが躍るなど、日本の防衛協力に対して概ね好意的だ。

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