「バラエティー豊かと言えないバラエティー番組」は変わるか? "金光氏退任"よりも注目したいフジテレビ《覚悟の発表》
だが、今はどうだろうか。フジテレビの人権侵害の土壌を生み出したこの言葉が、すべての局にとって「呪い」になっているように思える。
そもそも、いつの間にゴールデンタイムがバラエティー番組だらけになったのだろうか。どのチャンネルも同じタレントが出てきて、クイズやゲームや旅やグルメを扱っている。YouTubeで集めた面白映像の番組も増えた。昭和と令和の時代を対比する番組が最近のトレンドだ。そうした要素が、タレント違い・ネタ違いの順列組み合わせで企画されているようにしか見えない。
番組名は芸人の名前の組み合わせが目に付く。かまいたち、千鳥、サンドウィッチマン、バナナマンあたりを組み合わせれば、タイトルも企画も一丁上がりだ。バラエティー豊かとは言えないバラエティー番組で、タイムテーブルが埋め尽くされている。
それで取れる視聴率は、個人視聴率で2%、3%、4%。日本人の数%しか見ないのに、人気番組といえるだろうか。
「楽しくなければ」はもう言葉の寿命を迎えている。40年以上も前の、考案した人物も亡くなったスローガンに、いつまでテレビ局は引っ張られているのだろうか。
「最後のテレビ世代」はすでに50代
2025年の人口ピラミッドを見ると、団塊世代(1947〜1949年生まれ、現在70代後半)と団塊ジュニア世代(1971〜1974年生まれ、現在50代前半)の2つの大きな塊が上のほうにある。高齢者は在宅率が高く、自然とテレビ視聴者の核を占める。視聴率が高い番組はほぼ、人数が多いこの世代が見ている。
次の塊である団塊ジュニア世代は、子どもの頃にフジテレビが「楽しくなければ」を掲げたのを見ている。最後のテレビ世代であり、「楽しくなければ」を言葉どおり楽しんできた。
その下はそもそも、フジテレビの全盛期を知らない世代だ。「楽しくなければテレビじゃない」という言葉はスルーされる。Z世代(1990年代後半〜2010年代初頭に生まれた世代)には「令和じゃない」と言われそうだ。
もはやテレビは、「楽しくなければ」にピンと来ない世代にフォーカスせねばならない。だから、脱却しないと生き残れないのだ。
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