「最先端IC封じ」をかわす中国ハイテク産業の野望。先頭はファーウェイ、自国完結のサプライチェーン

![週刊東洋経済 2025年5/10・5/17合併号(半導体 異変)[雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/518pMrSuSiL._SL500_.jpg)
中国の産業界がAIに欠かせない最先端IC(集積回路)の国産化を急いでいる。米中ハイテク摩擦の焦点であり、米政府は技術の対中禁輸で開発を封じてきた。ところが最近、通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)を先頭に実績を重ねつつある。
「『ICチップが不足し、基本ソフト(OS)が欠けている』という懸念はすでに和らいでいる」。中国共産党機関紙の人民日報によると、ファーウェイ創業者の任正非CEOは習近平国家主席が2月に主催した民営企業家の座談会で、そう訴えた。
中国・香港メディアの一部は、任氏がこの場で国内2000社と共同で「スペアタイヤ計画2.0」を発動すると語ったと報じた。半導体、工業用ソフトなど重要分野でエコシステムを再構築し、2028年までにサプライチェーン全体で70%超の「自主化率」を目指すという。
「アメリカと激しい衝突を迎える」
ファーウェイのスペアタイヤ計画は事業継続計画(BCP)の一種だ。同社は03年、米同業大手モトローラへの身売り交渉を進め、合意寸前に至ったことがある。
あらかじめ米社傘下に入っておき、欧米市場の開拓で摩擦が起こるのを避ける狙いだったが、交渉は土壇場で白紙に戻った。自社での事業継続を余儀なくされた任氏は「10年後に米国と激しい衝突を迎える」ことを覚悟し、スペアタイヤ計画の準備を指示したのだ。
計画は①04年設立の子会社、海思半導体(ハイシリコン)によるIC設計、②12年に始めた独自OS「鴻蒙(ホンモン、英文名はハーモニーOS)」の開発──が2本柱だ。米政府が18年からファーウェイ向けを含む対中制裁を発動すると、計画は真価を発揮した。最もわかりやすい成果が、23年8月発売の高機能スマートフォン「Mate 60 Pro」だ。OSには米グーグルの「アンドロイド」ではなく、ハーモニーOSを搭載。さらに注目を集めたのが、7ナノメートルの先端プロセス(製造技術)を使ったロジック(演算)ICを積んでいたことだった。
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