「脳死マシーン」「臓器摘出バス」…中国の“臓器移植”の実態。中国で死刑囚の“まだ生きている遺体”から臓器移植した医師の後悔も

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そして、今も中国で移植を受ける患者、受けたいと望む日本人患者は少なくない。中国でなら渡航から帰国まで2カ月から3カ月で移植が可能なのだ。

つまり、レシピエントに適合するドナー臓器が、それだけの期間で現れる、ということだ。

2007年以降、難病患者支援の会からは、毎月、定期的にレシピエントが中国に送られ、腎臓移植手術を受けていた。

「中国側の病院とも信頼関係が築かれています」

菊池は悪びれることなく私の取材に答えていた。

ドナーに関しての情報が書面で説明されることはない。しかし、死刑囚からの臓器移植の場合、臓器提供の知らせは午前中にレシピエント側に伝えられるのが一般的らしい。

〈北京からきた臓器〉

これが死刑囚から提供された臓器を指す、関係者間で通用する隠語だ。

中国での腎臓移植費用はおよそ二千数百万円。そして、この移植費用は毎年数百万円単位で上がっていった。

難病患者支援の会の評判を聞いた医師から、中国での移植を望む患者が紹介されてくるようになった。そうした患者を中国に送ったケースがいくつもある。移植に成功してレシピエントが日本に戻ると、医師から連絡が入った。

「一部の医師は、患者紹介の謝礼を私に要求してきました」

難病患者支援の会は東京国税局の税務調査を受けている。設立から2009年までの2年間に、海外での臓器移植の斡旋で受け取った金など総額約6000万円の所得隠しを指摘され、修正申告をしている。

仲介役は日本の泌尿器科医、透析医

菊池はこれらの金の使途について、渡航移植患者を紹介してくれた医師への謝礼だったと認めている。

中国への渡航移植は、斡旋組織と患者といった単純な構図ではなく、そこに、日本の泌尿器科医、透析医が仲介役を果たしてきたという現実も見過ごすことはできない。

患者を難病患者支援の会に取り次いだ医師は、患者の詳細な治療歴、症状、移植に必要なデータを記載した紹介状を、渡航先の病院、医師宛に作成する。紹介状の費用だけではなく、手術に成功すれば患者から日本側の医師に対して、当然のように「謝礼」が支払われてきた。つまり1件の移植手術について、数千万円の金が患者、斡旋組織、医療関係者の間で飛び交う極めて胡散臭い世界なのだ。

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