モノにあふれているのに「何かが足りない」「もっと何かが欲しい」と感じてしまう人たちが知らない、脳に組み込まれた「欠乏ループ」の正体

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買い物カートに積まれた大量の商品
私たちがものを買い過ぎたり、食べ過ぎたり、スマホを見過ぎてしまうのには、進化がもたらした「欠乏ループ」というメカニズムが関係しています(写真:yukino/PIXTA)
食べ過ぎ、買い過ぎ、働き過ぎ、スマホの見過ぎ……。私たち現代人は、「足るを知る」ことが難しくなっている。それは、スロットマシンの設計にも取り入れられた「機会→予測不可能な報酬→迅速な再現性」という、ドーパミン系を刺激する「欠乏ループ」が、商品やサービスなど、ありとあらゆることに取り入れられ、あなたを浪費や依存に駆り立てているからだ。今回、脳に組み込まれた「欠乏ループ」のメカニズムとその対策を示す『満足できない脳: 私たちが「もっと」を求める本当の理由』より、一部抜粋・編集の上、お届けする。

なぜ度を過ぎた行動をしてしまうのか?

満足できない脳: 私たちが「もっと」を求める本当の理由
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科学ジャーナリストおよび大学教授として、私は人間行動の理解に興味を持っている。人はみな、新しくて良い習慣を培うことに意識を向けたがる。でも、私が知りたいのは、人間をもっとも害する行為をどう解消できるかだ。

なぜかと言えば、新しくて良い習慣を促進しようといくらアクセルを踏んでも、悪い習慣を解消しないかぎり、足はブレーキに乗ったままだからだ。

そして私は、人間をもっとも害する行為の特徴に気づき始めていた。それは、迅速な再現性だ。最悪の習慣とは、私たちが何度でもすばやく再現でき、あげく自分を損なうことになる行動だ。

こうした行動は往々にして、短期的には楽しくて有益でも、長期的には望ましくない結果をもたらす。人はだれでも、ある程度はこういう行動をとる。そして、逆効果になっていると気づいても、なかなか歯止めをかけられない。

どんな行動も度を過ぎなければ問題ないことは、だれもが知っている。ではなぜ私たちは、適度にするのがそんなにも苦手なのか? なぜ満腹なのに食べ続けるのか? なぜあふれるほどものを持っているのに、まだ買い続けるのか? もうほろ酔いになっているのに、なぜ飲み続けるのか?

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