モノにあふれているのに「何かが足りない」「もっと何かが欲しい」と感じてしまう人たちが知らない、脳に組み込まれた「欠乏ループ」の正体

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不愉快な気分になるのに、なぜSNSをスクロールするのをやめられないのか? 画面を越えた向こう側で、もっと意義のある人生が過ぎ去ろうとしているとわかっていながら、なぜ次々エピソードを読んでしまうのか?

なぜ袋小路に陥ってしまうのか? 何度も何度も何度も後悔していることを繰り返すスパイラルに、なぜはまりこんでしまうのか?

私はこれらの行動が通常、「欠乏」感に対する反応であることを知った。そして、それを刺激する小さな「欠乏のキュー」があれば反応が起きることも。

欠乏のキューとは、「欠乏のマインドセット」と研究者が呼ぶものを作動させる情報のかけらだ。そのスイッチが入ると私たちは、自分には何かが欠けていると思い込む。そして本能的に、その問題を解決し、自分を完全だと思わせてくれる――であろう――何かを一心に追い求めたり、行ったりする。

欠乏のキューは空気のような存在だ。私たちのまわりにも、内側にも存在する。広告やSNS、ニュース、同僚とのおしゃべり、近所の散歩などを通じてそれは私たちのもとに届く。経済の低迷や世界的パンデミックのように、直接的かつ包括的な場合もある。あるいは、隣人がピカピカの新車を購入したというような、微妙で些細な場合も。

生き残るための古代の行動システム

欠乏に対する私たちの反応は、何も新しいことではない。それは心のなかで自然に進化した、人間の祖先が生き残るための古代の行動システムだ。

科学者たちは1795年からもう、欠乏のマインドセットと、欠乏のキューに対する反応を詳述してきた。そしてこのテーマは現在、心理学者、人類学者、神経科学者、社会学者、経済学者、生物学者にとって熱い研究分野になっている。

人類史の大半において、人間は新たな欠乏のキューに反応し、より多くを渇望し消費し続けることで生き延びてきた。それは、今日(こんにち)では定説になっている。

人間はさまざまな過酷な環境下で進化してきた。万事が不足した欠乏の世界だったことがその共通点だ。

次ページより多くを追い求める者が生き残った
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