「夜中に揺れる」「家の中まで下水の臭い」 発生から3カ月、報道は激減でも今なお続く道路陥没事故「八潮」住民の悲痛な叫び

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工事が進む一方で、事故の原因究明はこれからだ。埼玉県は下水に含まれる有機物の分解によって発生した硫化水素が、酸化して硫酸となり、下水道管の内面を腐食させたことが一因とみている。ただし、2021年度に実施された定期点検では「ただちに補修が必要な状況ではない」と評価されていたことから、その他の要因も検討する必要があるだろう。

軟弱地盤では、地盤沈下や支持力の不均等が起こりやすく、埋設された管路に片寄った荷重がかかることで損傷が進行する可能性がある。ほかにも、地盤改良や管路敷設など施工時に何らかの問題がなかったかも検討する必要がある。

復旧の方向性と今後の予防策

埼玉県は、事故現場周辺の下水道機能を安全かつ安定的に回復させるため、「複線化」と呼ばれる仕組みを導入する方針を示している。これは、鉄道における複線と同様、1本の下水道管だけに頼るのではなく、現場周辺にもう1本の管を並行して敷設するものだ。

下水を簡易的に敷設したパイプで別の管に移動させる(写真:筆者撮影)

4月23日に開かれた埼玉県の「復旧工法検討委員会」の資料によると、事故現場に直径約3メートルの下水道管を新たに設置する。事故現場の上流約2キロメートル、下流約2キロメートルの大規模かつ複雑な土木工事となるため、すべての復旧作業が完了するまでに5~7年程度かかると見込まれている。

八潮市の事故は大きなニュースになったが、実は老朽化した下水管に起因する道路の陥没事故は日本全国で起きている。その数は2022年度だけで2625件にのぼる。

上下水道の老朽化は日本中で進んでいる。国土交通省によると、2040年には全国約74万キロメートルの上水管の約41%、約49万キロメートルの下水管の約34%で、建設後50年以上が経過する見通しだ。

事故を受け、国交省は全国の自治体に下水道の点検を要請。対象となるのは、内径2.0メートル以上かつ1994年度以前に設置された下水道管路だ。八潮市の道路陥没現場と類似の構造・地盤条件の箇所、管路の腐食しやすい箇所、陥没履歴があり交通への影響が大きい箇所は優先的に点検を行う。

次ページ焦点は「点検頻度の基準」と「非常時への備え」
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