「精神の高尚さを失うな」、"正論政治家"村上誠一郎が危惧してやまない「この国の針路」 9000字ロングインタビュー【後編】
イギリスでは2024年に総選挙が行われ、保守党が惨敗してスナク政権が崩壊。労働党のスターマー政権が誕生しました。フランスでも昨年7月の下院選挙で、マクロン大統領が率いる与党連合は大きく議席を減らし、左派連合の新人民戦線や右派の国民連合が議席を伸ばしました。
ドイツでは今年2月の総選挙で、最大野党のドイツキリスト教民主同盟が勝利し、ショルツ政権は歴史的敗北を喫しています。しかも極右政党である「ドイツのための選択肢」が第2政党になるなど、右傾化が顕著です。
アジアでも今年4月、韓国で尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が罷免されました。世界の主な民主主義国家が大きく揺らいでいるのです。
また、トランプ関税によって、アメリカはこれまでの民主主義・自由経済のリーダーであったのが、自国中心主義に変わるように見えます。「パックス・アメリカーナ(アメリカによる平和)」が終焉し、その後を中国とロシアが席巻しようとしています。
例えば習近平国家主席は4月14日から、ベトナム、マレーシアそしてカンボジアを歴訪しました。相互関税をかけてくるアメリカに対抗して、インフラ整備やサプライチェーンの構築について、より強い協力体制を呼びかけています。
これは新たなブロック経済の始まりにつながるかもしれません。アメリカがアジアから退いた後は、中国、ロシアが勢力を伸ばすこととなります。
教育で自分で飛べる“翼”を身につけさせよ
――軍事も経済もアメリカに頼ってきた日本ですが、いよいよ岐路に立たされているわけですね。
だから日本は自由な経済、健全な民主主義を守る役割を果たさなければいけません。
まず立て直すべきは、財政と金融と外交です。アメリカに代わって、ロシアや中国が存在感を高めつつある今、わが国としても、新しい外交戦略をきちんと立て直す必要があります。
財政再建、金融緩和の出口戦略、税と社会保障の一体改革は、次の世代が生き残るために必要な喫緊の課題です。日本銀行の植田和夫総裁は昨年3月、金融政策決定会議でゼロ金利政策からの脱却を決めました。「金利のある世界に戻そう」ということですが、今やトランプ関税問題で為替も株式市場も予測がつかないほど混乱しています。よほど注意深く行わなくてはならないでしょう。
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