例えば、静岡県の掛川城は新東名「掛川PA」ではなく、東名高速「小笠PA(上り)」のデザインとなっている。これは、新東名が開通するまでは東名しかなく、小笠PAが掛川城に最も近いエリアだったからだと推察される。
また、兵庫県の姫路城は、姫路市から少し離れた中国道「加西SA(下り)」に描かれている。好みもあろうが、やはりスタンプそのものが大きい西日本のスタンプはデザインも大胆で、中国道「王司PA」のふぐ提灯を描いたものなどは印象深い。

東名高速「富士川SA」では、上下線とも東名高速が描かれているが、名神「伊吹PA(上り)」では、高速道路のスタンプなのに描かれているのはPAの近くを走行する新幹線というちょっと不思議なケースもある。
スタンプ集めは日本の文化かもしれない
筆者は子どものころ駅のスタンプを熱心に集め、また小学生のときに訪れた1970年の大阪万博でパビリオンごとのスタンプを嬉々として押していた。そうした思い出をふり返ると、スタンプ集めは児戯に等しい楽しみのようにも思える。
夏休みの親子スタンプラリーを見ても、スタンプ集めは子ども向けの色合いが強い。しかし、その土地を実際に訪れなければ入手できず、しかもそのデザインには郷土色の強い景観や名産が描かれていることを考えると、歴史や地理の学習にもなるし、旅をふり返る貴重な記録にもなる。

筆者はこれまで、70カ国あまりを鉄道やバス、レンタカーで旅してきたが、日本統治時代に日本の鉄道文化が広まった台湾や韓国などを除けば、交通機関の施設で地域の特色を示した記念スタンプは一度たりとも見たことがない。
ニューヨークを代表するグランド・セントラル駅でも、ドイツやオーストリアのアウトバーンのサービスエリアでも、イランやモロッコの高速道路の休憩施設でも、スタンプにはお目にかかっていない。駅のスタンプもハイウェイスタンプも、日本独自の文化といっていいだろう。
もしかしたら、日本は昔から「印鑑至上主義」で、いまだにお役所や多くの企業では、サインよりも名入りの印鑑が重視されていることと無関係ではないかもしれない(筆者が勤める大学でも書類に押印を求められる機会は多い)。

日本独自の、そして古くて新しい「スタンプ集め」は、まだまだ旅を彩る万人向けの趣味として、それがデジタルスタンプに代わったとしても、細く長く続いていきそうに思われる。
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