「本当にやりたい」と思っている内容が、時期によって変化することを織り込んでいることが、『弱キャラ友崎くん』の言葉を真に迫ったものにしています。
心から「本当にやりたい」と思っていても、それは簡単に変化します。知識や経験が少なく、想像できる範囲が狭いときは特にそうです。
自己啓発文化は、「本当にやりたいこと」がたった一つの真実としてどこかに必ず定まるはずだと暗に想定していますが、そのような見解は、自分の多様性を押し殺すだけでなく、こうした時間的変化の可能性をなかったことにしています。
このことを考慮すれば、「自分の心に従う」ことがいつでも適切なわけではないというのは確かでしょう。
ジョブズの本当の人生を考えてみると…
それに、スティーヴ・ジョブズについてよく知る人なら、彼が当初は Apple やコンピューティングにそれほど情熱を感じていなかったことを知っているはずです。
当時のジョブズが「本当にやりたかったこと」は、日本に来て禅の僧侶になることで、当初は仲間のスティーヴ・ウォズニアックに誘われてしぶしぶ起業に取り組んでいました。
だから、彼のテクノロジーへの情熱が花開いたのは、実際に仕事に取り組んだ「後」なのです。
ジョブズ自身、実際には、他者の視点をノイズとして排除したわけでも、「自分の内なる声に従って」キャリアを決めたわけでも、自分の内面にだけ関心を向けて天職に出会ったわけでもありません。
彼のスピーチがどれだけ心揺さぶるものだったとしても、彼の実人生を踏まえて話を聞いたほうがいいはずです。
書店で売れがちな自己啓発本のタイトルを見ればわかるように、キャリアや人生、家族、人間関係に関わる悩みに対処する際に、私たちは、「自分の内面」「自分の心」に悩みの答えを求めようとしがちです。
しかし、この処方箋は実状に即しているわけでも、それほど役に立つわけでもありません。
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