いつでもつながれる「常時接続」がもたらした弊害 つながっていても「寂しい」のはいったいなぜ?

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「常時接続の世界」のコミュニケーションの形とは?(写真:yoshan/PIXTA)
インターネットの発達、スマートフォンの普及がもたらしたものは何でしょうか。それは、いつでもどこでも他者とつながれる「常時接続の世界」です。しかし、常時接続の世界で〈孤立〉と〈孤独〉が失われました。私たちには〈孤独〉が、そして自分自身と向き合う時間が必要なのです。
新進気鋭の哲学者、谷川嘉浩氏の新著『スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険』では、哲学からメディア論、カルチャーまで、さまざまな切り口でスマホ時代に私たちはどう生きるべきかについて考察を重ねていきます。本稿では同書より一部を抜粋しお届けします。

スマホが変えてしまった、私たちの社会

スマホ時代に生きるとはどういうことなのか。新しいメディアは私たちや私たちの社会をどう変えてしまったのか。そういった疑問を携えながら、「スマホ時代の哲学」をやってみましょう。

変化について考えようとするとき、私たちは変化をもたらした出来事にだけフォーカスを合わせ、特異点扱いをしてしまいがちです。

しかし、変化について考えようとするなら、今の私たちだけでなく、その「前」がどうなっていたかを冷静に知る必要があります。経緯を知るには前と後の両方見ないといけないという単純な話ですが、多くの人は忘れがちです。

鉄道輸送、郵便制度、電信、ラジオ、映画、テレビ、インターネットなどといった情報技術の進歩はスピードへの期待を抱かせてきました。その期待は、実際に、よりすばやい情報のやりとりの渦へと私たちを巻き込んでいく。今やほとんど時差なく、リアルタイムに遠い地点の出来事を知ることができますよね。

アメリカ同時多発テロ事件(9・11)やエリザベス女王の死去、他国首脳のスキャンダルだって、日本国内では直接何かが起こっていないので、それを伝えるテクノロジーや報道がなければ、“対岸の火事”だったでしょう。

にもかかわらず、私たちが衝撃を受けたのは、世界各地の発言や出来事についての情報が、リアルタイムで伝えられる世界にいるからです。通信機器の進化は、リアルタイムのやりとりを期待させます。

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