「風邪が5類?」「風邪を報告?」厚労省が新たに始めた患者数のモニタリング調査《パンデミックへの備え》になりにくい残念な理由

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マスコミも、<「風邪」流行状況、公表始まる パンデミック備え>(毎日新聞4月23日)、<風邪を「5類」に 新たな感染症の発生に備えよ>(読売新聞社説4月20日)と報じている。

ARIの流行をモニターしつつ、「未知の感染症の流行を早期に検出するため」というのが、現時点でのコンセンサスだ。だが、はたしてこれがそのように機能するのだろうか。

ARIとはどんな感染症か?

まずは、ARIについて説明しよう。

ARIは上気道炎や下気道炎を引き起こすウイルス性疾患の総称で、いわゆる「風邪」も含まれる。主な原因ウイルスは、ライノウイルス、季節性コロナウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス(RSV)、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)など、200種類以上になる。

ARIの主な原因であるライノウイルスは、最大で症例の50%を占め、初秋と春に流行しやすく、混雑した場所で広がる。通常は軽症で、7〜10日で治癒するが、喘息などのアレルギーのある人には悪影響をもたらすことがある。

次に多い季節性コロナウイルスは約15%を占め、冬に流行しやすいものの年間を通して発生し、免疫力が低い人は肺炎など重症化のリスクがある。

ただ、流行状況は場所や年によって異なる。例えば、新潟県が実施した2013年の調査では、医療機関で採取した検体331件中265件(80.1%)からウイルスが検出された。最多はインフルエンザで、次いでライノウイルス、パラインフルエンザ、RSウイルス、アデノウイルスだった。

この調査では県内で初めてサフォードウイルスも確認されており、調査を行うことで、ARIの流行状況、および新たな病原体の流行を同定できることがわかる。

これまで我が国の感染症モニタリングは、厚労省内の「施設等機関」である国立感染症研究所(現JIHS)が厚労省と連携し、「感染症発生動向調査」の一環として実施されてきた。

この調査は全国の定点医療機関からの報告を通じ、感染症の流行状況をモニタリングしていた。定点把握とは、指定医療機関が定期的に患者数を報告する方式で、5つの領域(診療科)が対象となっている。

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