「数学が零点ではどうしようもない…」 《朝ドラ あんぱん》モデルの「やなせたかし」あまりに苦手すぎた数学の大胆戦略
試験当日、思わぬことが起きた。東京高等工芸学校での数学の問題を見て、やなせは思わず「あ!」と叫んでしまったという。それも無理はない。問題はすべてひたすら暗記したものから出されており、どの解き方もわかったのだ。
だが、その一方で、英語と実習の図案のほうは、まるで自信が持てない内容で、意気消沈。この1次試験に合格すれば、次に2次試験が待っていたが、まるで受かった気がしなかったようだ。
それだけに、東京高等工芸学校の1次試験を突破したとわかったときには、さぞ驚いたことだろう。慌てて2次試験の会場へと向かっている。試験に10分遅れる始末だったが、作文は得意だったので問題なかったという。
絶望の淵から天国へと飛び上がった
それでも作文のほかに口頭試験などもあった。この2次試験で40名のうち20名に絞られる、というから、そのハードルは決して低くはない。
はたして2次試験の結果は……というと、なんと合格。京都高等工芸学校図案科の試験には落ちながら、難関である東京高等工芸学校のほうに合格することができた。試験は受けてみないとわからないものである。
「自分の番号を発見した時の感動は、今も忘れない。まちがってはいないかと、何度も何度もたしかめた。夢かもしれないと思って見なおした。大げさと思うかもしれないが、正直に言って絶望の淵から天国へとびあがった気分だった」
このときに東京高等工芸学校図案科に合格したことが、やなせの人生を大きく変えることになるのだった。
【参考文献】
やなせたかし『アンパンマンの遺書』 (岩波現代文庫)
やなせたかし『人生なんて夢だけど』(フレーベル館)
やなせたかし『ボクと、正義と、アンパンマン なんのために生まれて、なにをして生きるのか』(PHP研究所)
やなせたかし『何のために生まれてきたの?』(PHP研究所)
梯久美子『やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく』 (文春文庫)
真山知幸『天才を育てた親はどんな言葉をかけていたのか?』(サンマーク出版)
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