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「数学が零点ではどうしようもない…」 《朝ドラ あんぱん》モデルの「やなせたかし」あまりに苦手すぎた数学の大胆戦略

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  • 真山 知幸 伝記作家、偉人研究家、芸術修士(MFA)
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やなせが寛からの「医者の学校へ行く気はないか。病院もお前にゆずってもよい」という申し出を断ったのも、絵の道に進みたいこともあったが、数学への苦手意識も強かったらしい。当時をこう振り返っている。

「心の中でぼくは申しわけないと思った。しかしいくら今から頑張っても、とても医大には合格できそうにはない。数学が零点ではどうしようもない」

数学が零点……。かなり絶望的な状況だったようだ。

図案の実習に2色で挑んだワケ

数学の壁に立ち向かう前に、やなせはユニークな方法でまずは環境を整えている。

入学試験で課せられる図案の実習には「色数を絞って挑む」ことを決めたのである。 どんな問題が出されようが、黒色と黄色の2色で描くと決めて、それ以外の絵の具を持っていかないことにしたのだ。

何とも大胆だが、少しでも図案の実習で考えることを減らすことで、それだけ学科試験の英語と数学、特に苦手な数学に注力しようとしたのである。

やなせがその2科目の対策としてやったのは、『英訳五百題』『英作文五百題』『代数五百題』『幾何五百題』の4冊だ。これを繰り返しひたすら解くことで、1年かけて問題ごと暗記しようと考えたのである。

杜の陽だまりガレリア(写真: yu_photo / PIXTA)

この対策について、やなせは自身の著作にこう書いている。

「理屈は何も解らないが、五百おぼえていれば似たようなものは何とか解るだろう」

朝ドラ『あんぱん』では、「書いてある問題の意味すらわからない」と、北村匠海演じる嵩が、数学の問題に苦しむ場面があった。実際もそれに近い状態だったようだ。

やなせが受けた2つの学校について、合格数で言えば、東京高等工芸学校図案科が20人、京都高等工芸学校図案科が40人。東京のほうが難しかった。

やなせはこの試験に命を懸けていたといっても大げさではなく、並々ならぬ意欲でのぞんでいる。

「ついに受験の日がやってきた。自信は少しもなかった。今年駄目だったら自殺しようとぼくは思っていた。もうどうでもいいやという心境だったが、本当に自殺したかどうかは解らない。多分、やっぱり自殺はしなかっただろう」

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