二子玉川で始める「楽天X」とは何なのか 教育・医療には巨大な可能性がある
山田:楽天Xのアイデアは、楽天研究所で進めているのですか。
三木谷:研究所が進めているのは、どちらかというとテクノロジー的なこと。テクノロジーの視点から見てこういうことができるよねということをやっています。まあ、そうじゃない時もあるんですけど、主にはそうしたことをやっている。いわば目の前にある課題をテクノロジーで解決をしていくということをやっているわけです。
それに対し、楽天Xでやろうとしているのは、解決をする、という発想じゃない。今ある延長線上でステップワン、ステップツーみたいに進むのではなく、一気に突き抜けてやったらどうなっちゃうの?ということを考えています。
山田:ディスラプティブ(破壊的)なイノベーションを考えている、と。
三木谷:そう。教育を根本的にディスラプトできる可能性がある。そういう、どちらかというとトップダウン的なアプローチでやっていくのが楽天Xです。これはボトムアップではない。とっぽいことをやっている人たちを連れてくるとか、探してくるとかっていう話なんです。
「スマートインテリジェンス」レイヤーの衝撃
山田:教育の分野は、すでに始めていますか。
三木谷:日本では、今ドリコムさんとReDucateというものを始めています。これは楽天とエデュケートを合わせた造語です。英語学習アプリの「えいぽんたん」は、常にもうダウンロードランキングが1位です。「きこえーご」というアプリもあります。エデュケーションとラーニングを合わせたようなことです。それから、幾つかの最先端のイーランニングの会社への投資も始めています。
僕らが投資や出資でやろうとしていることは、今までの英語のテキストブックというのは、みんな同じテキストブックだったじゃないですか。でも、よくよく考えてみると、同じテキストブックを2回読む必要はない。忘れちゃった単語だけを含む文章をオートマティックに作り出していくこともできるわけです。
それによって、教育効率というのは圧倒的に高められるはずです。今までは子どもたちにつまんなくても机の前に向かって勉強しなさいというやり方でしたが、そうじゃなくて、楽しみながら学習すればいいんでしょ、という概念が新しく出てきているということです。
山田:ゲーミフィケーションの要素を入れれば、自分が過去に意味がわからなかった単語ばかり集まった、ボスキャラみたいな問題ができるわけですね。
三木谷:そういうこともできるでしょうね。今起こっていることは、単純にショッピングがインターネットショッピングになったり、あるいは雑誌がオンラインメディアになったり、あるいは旅行の予約がオンライントラベルになったりということじゃない。この社会の構造には、新しい「スマートインテリジェンス」というレイヤーができたんだと思っています。全く違う新しい仮想レイヤーができたわけです。
人間の五感に加えて、もう一つの感覚ができたっていってもいいのかもしれません。こうなると、全くもう人間の行動様式が変わる。人間の行動様式が変わるので、あらゆるものが再定義されていく。おそらく20年後、30年後には、もしかしたら通貨っていうものはないかもしれない。「通貨なくてもいいですよね、今や」っていう話になるのは時間の問題ですよね。あらゆるものが再定義される時代に入ってきたのが今だと思います。
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