京都で”1泊2食付き”をやめる旅館が続出。「素泊まり」「飲食店の予約代行」にシフトの背景には外国人観光客の≪正直な本音≫があった

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当時、実際に食べ残された朝食を見せてもらったことがあるが、豆腐は1片だけ欠けていたり、歯形の付いたしいたけやふき、にんじんなどが手付かずの含め煮の上に乗っていた。

「ほとんどすべての食事を残し、ファストフード店の朝食メニューや、コンビニで手軽なサンドウィッチなどを購入して食べている姿をよく見かけますね」(旅館Aの経営者)

確かに日本のコンビニ食は外国人から人気だ。コンビニにも地域限定商品や、季節限定の商品も販売されているため、コンビニ食もある意味日本文化に触れるチャンスといえるが、旅館側としては複雑な心境だろう。

(写真:Sunrising/PIXTA)

「料理長の定年」を機に徐々に縮小

旅館Aの経営者はこのまま料理の提供を続けるべきか悩んでいた。創業して約100年、ずっと美味しい料理でおもてなしをしたいと営業を続けてきた。料理は旅館Aのアイデンティティーのようなものだからだ。

しかし、料理が利用客からの最大のクレーム原因になってしまっていた。食材を用意しても、キャンセルされる。「準備しているから無理だ」と断っても、「食べていないのになぜお金を払わないといけないのだ」と詰められる。お互い言葉が違うし、意思の疎通が難しい。キャンセルを受け入れたら、事前決済の場合は予約サイトやクレジットカード会社へ返金の連絡をしなければならない。海外サイト経由の場合がほとんどのため、そこでも言語の壁が立ちはだかる。ただでさえ人手不足なのに、対応に追われて忙しくなる。

そんな中、料理長が定年を迎えた。旅館Aは引き留めたが、料理長は田舎に帰って妻とゆっくり過ごしたいと固辞した。旅館Aはその意思を尊重し、料理の提供をやめることにした。

周りの旅館を参考に、仕出し弁当の提供をしたり、朝食だけ続けてみたりとひとつずつ試して、徐々にやめた。

筆者が話を聞いたのは、朝食の仕出し弁当の提供を打ち切る直前だった。専務は「弁当ももうやめます。結局は同じことでした。クレームの原因になってしまう」とほとんど手を付けられていない弁当を見つめて、寂しそうに言った。

(写真:m.Taira/PIXTA)
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