子猫のかたわらに「おねがいします」の一言と3万円――置き去り主の責任はどうなる?相次ぐ猫や犬の遺棄と《法的リスク》
以前、動物への犯罪に詳しい弁護士に動物愛護法における「遺棄」について聞いたところ、「対象となる動物を移動させて、その動物の生命や身体を危険にさらす行為と考えられる」とのことでした。つまり、「犬や猫をわざわざ危険な場所に移し、置き去りにすること」が遺棄になります。
前述した豊川市や相模原市のケースでは、遺棄した場所が保護猫カフェや保護猫シェルターであるため、「危険な場所に移したわけじゃないので、遺棄にはならない」と弁解するかもしれません。
しかし、保護猫カフェや保護猫シェルターが活動していない時間帯であることや、事前に連絡することなく勝手に置いていく行為は、猫を速やかに保護することができない状態であり、それは「危険な場所に移し、置き去りにした行為」として遺棄罪が成立すると考えられます。
まして、名古屋市のケースでは、産まれたばかりの体力のない子犬であるうえに、人目に付きにくい植え込みに移し、置き去りにしています。命の危険が伴うことは火を見るより明らかで、高い確率で遺棄罪が成立することでしょう。
さらに、こうした行為は遺棄にとどまらない可能性もあります。
例えば、犬や猫が空気穴を開けていない段ボールなどで窒息死した場合、パニック状態でけがをした場合、発見が遅れて餓死した場合などは、虐待行為として、動物愛護法の第44条1項の適用もありえます。
そうなれば、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処せられる可能性があり、かなりの重罪を背負うことになります。
動物愛護法違反の疑いで逮捕されれば、その時点で住所・職業・年齢・名前などが公表されることとなります。罪を犯した者として今まで通りの生活ができなくなるばかりか、それまで築いてきたものも失ってしまいます。犯行が立証されれば処罰を受けることになり、一生その罪を背負って生きていかなければなりません。
筆者宅の玄関にも子猫が置き去りに
実は筆者の家の玄関前にも、キャリーバッグに入った複数の子猫が置き去りにされていたことが2度ありました。筆者が動物に関わる仕事をしていると知ってのことだと思います。
1度目は子猫5匹で、「飼い猫が子猫をたくさん産んでしまい、すでに4匹の猫がいて全部は飼えません。大変心苦しいのですが、どうかこの子たちをよろしくお願いします」といった内容の手紙が添えられていました。
2度目は子猫3匹で、「道端で子猫を拾ったのですが、自分の持病が悪化して飼うことができなくなりました。1万円同封しますので子猫の飼育費に充ててください」と、手紙と現金が添えられていました。
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