国立がんセンター不祥事隠蔽の全貌、厚労省が公益通報をたらい回し
「同僚から注意された臨床検査技師が、乳がんで闘病中の同僚の妻の血液検体を腹いせに廃棄し、測定していないにもかかわらず、でたらめな検査値を入力した」
「臨床検査で用いる検査項目の基準値が正しい値から100倍以上も懸け離れていることを知りながら、その事実を隠蔽して単なる基準値の改訂としてすり替え、不祥事の報告義務を怠った」
もし、こんな不祥事が続く病院で治療を受けていたとしたら、恐怖や不安を感じて通院先を変更する患者は決して少数ではないだろう。
わが国のがん研究・医療の総本山である国立がん研究センター(嘉山孝正理事長、東京都中央区)──。
同センター東病院(千葉県柏市)に勤務していた検査技師が冒頭のような不祥事があったと厚生労働省に公益通報者保護法に基づく公益通報を申し立てたのは昨年8月15日。そして、1カ月後の9月28日、検査技師は厚生労働省記者クラブで公益通報を行った事実を公表した。
同じ日の夕刻、がんセンターも急きょ、記者会見を開催。「検査方法や検査数値に誤りはなく、患者の方々に不利益が生じるようなこともなかった。基準値についても2009年8月までに修正を完了し、現在はこのような問題がないことを確認した」とのコメントを発表した。
そのうえでがんセンターは、「独立行政法人化以前における体制ではあるが、誤りを正すための意見があったにもかかわらず、迅速な対応がなされなかったのは残念」と言及。詳細な調査のために、嘉山理事長を委員長とする「東病院検査問題調査委員会」を発足させた。
それから5カ月近く経った今年2月20日、がんセンターは「東病院検査問題調査報告書」を公表。記者会見で嘉山理事長は「東病院に隠蔽的体質があったのは事実だ」と発言した。その一方で嘉山氏ら調査委員会は、「健康被害にはつながっていない」「(検査技師の指摘には一部に)間違いもある」などと説明。問題を指摘した検査技師について、「職場の同僚との人間関係にも問題があった」などとも語った。
ここまで事態がこじれた原因はどこにあったのか。がんセンターおよび厚労省の対応を見ていこう。