国立がんセンター不祥事隠蔽の全貌、厚労省が公益通報をたらい回し

だが、検体の廃棄や虚偽のデータ入力が臨床検査技師法に違反している可能性が高いことは明らか。納得できなかった黒沼氏は9月7日に再度、厚労省に公益通報申立書を提出した。しかし、厚労省は「調査権限がない」と繰り返すばかりで、やむなく9月14日に柏市役所を訪問。ところが、柏市の担当者からは「どう考えても厚労省の案件だと思う」という発言があったという。

厚労省は黒沼氏の妻の「検体廃棄および検査値偽装」の問題について、「きちんと事実認定されたうえでないと対応できない。検査が実施されていなかったと推認されることだけをもって、ただちに不正と断じることはできない」(医政局医事課)と説明。そのうえ、真相究明に乗り出すことにも否定的で、たらい回しが続いている。

厚労省が消極的な姿勢を貫く一方で、黒沼氏が厚労省に公益通報を申し立てた直後から問題含みの動きもあった。東病院内で「黒沼氏が厚労省に通報した」との情報が、管理職の間で駆け巡っていたからだ。黒沼氏の同僚は同氏に対し、病院の事務担当者から公益通報の情報を伝え聞いたとの発言をしている。

公益通報者保護法に明文規定はないものの、行政機関に通報した者の個人情報を保護すべきことについては、「行政機関情報公開法や公務員の守秘義務を定めた国家公務員法等の趣旨からしても当然である」と、公益通報者保護法について詳述した消費者庁の解説資料でも明記されている。公益通報の情報が厚労省から実際にがんセンターに漏れていたとしたら、漏洩した職員は国家公務員法に違反する可能性も出てくる。

黒沼氏が公益通報を申し立てたのは、元を正せば、がんセンター上層部が黒沼氏の指摘を正面から受け止めず、「病院長付き」という閑職に追いやったことに起因すると見ることもできる。

内容証明送付を禁じ病院長付きに左遷

黒沼氏は04年にがんセンターに赴任して以来、職場で数々の検査ミスが放置されている実態を発見。その都度、上司に責任の所在の明確化や再発防止を要請してきた。しかし、その多くが無視されてきたことは、公益通報申立書および病院内の会議録などからも明らかだ。

同僚による不祥事の後始末を命じられる一方、隠蔽が続けられるなど組織に自浄能力がないと感じた黒沼氏は昨年5月31日付で、上司による職務中の飲酒などの事実を書き連ねた文書を東病院の苦情相談担当者に内容証明郵便で送付。続いて6月3日には、妻の採血検体廃棄および検査数値偽装を指摘した内容証明郵便を同担当者に送っている。

ところが、6月27日付で、東病院の木下平院長から内容証明の書面送付などを禁じる「業務命令書」が黒沼氏に突き付けられた。そして病休明けで出勤した8月4日、院長室に呼ばれた黒沼氏に、生化学検査主任を解き「東病院長付きに配置転換する」との人事異動通知書が手渡された。その際、木下院長が黒沼氏に対し、次のように話していたことが、やり取りの記録で明らかになっている。

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