国立がんセンター不祥事隠蔽の全貌、厚労省が公益通報をたらい回し

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「あれだけ静かにおとなしくしていろと言ったのに。臨床検査部が混乱している」(木下院長)

「私は何もしていない」と抗議する黒沼氏に、木下院長は「とにかくおとなしく静かにということだ」と言い放った。そして、手渡された人事異動通知書には、「任命権者」として、「独立行政法人国立がん研究センター理事長 嘉山孝正」の文字が大書されていた。

これらの経緯から、がんセンターでは、検体廃棄をはじめとした臨床検査部での不祥事について、病院上層部が知っていたうえで左遷人事を発令した疑いも浮上している。

2月20日の記者会見で嘉山理事長は、不祥事を通報した黒沼氏について、「心から感謝したい。私にもっと早く言ってきてくれればよかった」と語った。だが、嘉山氏に対し、黒沼氏が不信感を抱いていることは事実だ。一方で、数々の検査ミスを犯してきた検査技師は何のおとがめもなしで、現在も同じポジションに就いたままだ。

一連の問題が続く中で、黒沼氏は健康を悪化させ、左目の視力障害や自律神経失調症などを発症。その黒沼氏について嘉山理事長は「彼(黒沼氏)はライアー(うそつき)だ」「健康状態も本人が言うほど悪くない」と本誌記者に断言。そのうえで、「彼は一連の不祥事について大変だと言っているが、実はそれほど大変じゃなかった」と言い切った。

さらに嘉山氏は、要求してもいないのに、がんセンターが把握している黒沼氏のプライバシーを記述した文書を本誌記者に見せたうえで、取材後に情報公開請求をして取得するように求めてきた。

独立行政法人化後も続く不祥事の数々。がん医療の総本山が異常であることだけは間違いない。

(岡田広行 撮影:大塚一仁 =週刊東洋経済2012年3月3日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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