国立がんセンター不祥事隠蔽の全貌、厚労省が公益通報をたらい回し

公益通報の情報を漏洩した疑いも

ここに「公益通報に関する申し立て」と題した一通の文書がある。宛先は厚労省大臣官房総務課行政相談室。差出人は国立がん研究センター東病院・病院長付きの黒沼俊光(49)という人物だ。黒沼氏は病院長付きとなる直前の8月4日まで東病院臨床検査部(「臨床検査科」とも呼ばれる)の主任検査技師を務めていた。

黒沼氏による申立書の冒頭には、次のような記述がある。

「事案は国立がん研究センター東病院臨床検査(科)にて発生したもので、本来、患者が受けられるべき適切な医療を阻害し、がん診療に対し直接的に影響を与え、臨床治験に重大影響をもたらす重要事案であります」

そして07年8月上旬に発生した事例として、C型肝炎およびB型肝炎検査での誤報告の経緯と原因、病院の対応策が取り上げられている(指摘事項の詳細は表の「事例1」)。そのうえで申立書では、「臨床検査技師長は事実を病院(上層部)に報告せず」と記されている。

黒沼氏が指摘した臨床検査部で起きた医療不祥事はおびただしい数に上っており(表はその一部)、申立書は裏付けとなる病院の内部文書を添付したうえで提出されている。がんセンターは昨年9月の会見で「不祥事は10年4月の独立行政法人化以前に起きた」と強調していたが、独法化後も不祥事が続いていたと黒沼氏は指摘。C型肝炎検査など複数の再発事例を挙げている。



 だが、度重なる不祥事の隠蔽や妻の検体廃棄および検査値偽装の指摘がありながらも、公益通報申し立てを受けた厚労省は適切な対応をしなかった。公益通報から翌々日の8月17日、医療機関を監督する厚労省医政局の担当者は「当省には職務権限がないので千葉県に行ってください」と黒沼氏を門前払い。ところが千葉県庁に問い合わせた黒沼氏に県の担当者は「なぜうちが通報先なのか。厚労省が対応すべきことではないか」と不満を漏らしたという。

納得できなかった黒沼氏は8月24日付で顧問弁護士名で厚労省大臣官房宛に事情説明を求める内容証明郵便を送付。すると厚労省医政局は「医療法および臨床検査技師法に規定する罪には該当しないことから、当省において公益通報として受理することは困難である」「保健所設置市である柏市が医療法の規定に基づく権限を行使していると承知していることから、(通報先として)柏市を教示する」との回答文を9月2日付で黒沼氏の顧問弁護士宛に送っている。

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