中国・ロシアの「決済システム」の連携強化が「ドル覇権」終焉を加速させる…注目は経済成長が著しいインドの動向

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通貨制度についても、ロシア・ルーブルは、すでに中国の人民元と変動幅を持った固定相場制を採用している。最近のコロナ危機の時に、各国の経済が大きく揺れた。その時にも、ロシアと中国は固定相場制を中断あるいは廃止するのではなく、変動幅を広げる対応をした。これは、中国の意思として政治的・経済的関係を大事にしたためで、多少の波風ではビクともしない仕組みにしたのである。

通貨の性質は3つある。経済、政治、そして象徴である。今後については、ロシア経済は、中国のそれに取り込まれていく可能性が高い。

そもそも、固定相場制で、固定される通貨の国は、固定してくる通貨の国にある程度の配慮が求められる時勢である。欧州のユーロ導入の事例を見てもわかるように、今後、その変動幅が狭められ、通貨の統一の可能性も否定できない。

しかし、通貨の性質の政治・象徴の2項目がまだそのレベルに及んでいないと考え、そこが、今後の通貨統合の可能性を低下させる。いずれにせよ、ロシアと中国の決済システムの接続をはじめとした経済統合は、西側諸国の基軸通貨のドル覇権を揺るがす可能性がある。

注目すべきはインドの動向

よく見ると、中国はかなりアグレッシブに人民元の国際化・流通域の拡大を図っている。遠距離であろうが貿易相手国に人民元決済を要求し、相手の国が資金不足の時は、人民元建ての借款を行っている(この点で日本も借款は円だけにするべきだ)。

さらなる注目点は、最大の人口を持つ、そして経済成長著しいインドとの関係である。現在は、中国・ロシアとの関係は決して良いとは言えない状態である。

しかし、今後、中国・ロシアの経済グループに入り、通貨制度の安定化を図り、決済システムの接続などということになってきたら、つまり、中国・ロシア・インドの経済連携=通貨的な接近がドル覇権を揺るがす可能性がある。逆に言えば、そのぐらいのレベルでないと、ドル覇権は揺るがないと考える。

アメリカに目を移すと、トランプ政権が不確実な政策を繰り広げていることは、アメリカ、そしてドルの信認を揺るがしている、ということでもある。このトランプの不確実性と中国・ロシア・インドの緊密性の2つの高まりによって、ドル覇権に揺らぎが生じることは筆者には否定できない。

宿輪 純一 帝京大学経済学部教授・博士(経済学)/社会貢献公開講義「宿輪ゼミ」代表

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しゅくわ じゅんいち / Junichi Shukuwa

帝京大学経済学部教授・博士(経済学)。1963年生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒。富士銀行、三和銀行、三菱東京UFJ銀行を経て、2015年より現職。2003年から兼務で東大大学院、早大、慶大等で非常勤講師。財務省・金融庁・経産省・外務省、全銀協等の委員会参加。主な著書に『通貨経済学入門(第2版)』『アジア金融システムの経済学』(日本経済新聞出版社)、『決済インフラ入門〔2020年版〕』(東洋経済新報社)、『円安vs.円高(新版)』『決済システムのすべて(第3版)』『証券決済システムのすべて(第2版)』『金融が支える日本経済』(共著:東洋経済新報社)、『決済インフラ大全〔2030年版〕』(東洋経済新報社)などがある。

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