――日中関係が冷え込んでいます。政治の世界では対中強硬論が強まり、国民から一定の支持を得ています。経済界では経済安全保障の観点から、中国との関係強化を表立っては言いにくい雰囲気があります。こうした現状をどうみていますか。
はっきり言って、極めて危うい状況だ。今の日本に横溢(おういつ)する「中国なしでもやっていける」「中国はリスクしかない」という空気感は、戦前の「鬼畜米英」の時代とそっくりだ。あのときも、国民をあおりにあおって米英や中国との対立を深め、敗戦に至った。
ところが敗戦後、一夜にして「米英礼賛」にひっくり返った。日本人はいったんあおられると、論理を忘れて感情の極北まで行ってしまう悪癖がある。
現実を見てほしい。中国は14億の人口を抱え、日本の10倍の市場規模を持つ隣人だ。そのうえEC(電子商取引)だけでなくAI(人工知能)やロボット、量子コンピューターなどでも世界のトップを走る技術大国だ。
アメリカのGAFAM(グーグル、アップル、メタ〈旧フェイスブック〉、アマゾン、マイクロソフト)などに対抗するBAT(バイドゥ〈百度〉、アリババ、テンセント〈騰訊控股〉)などの巨大企業も育っている。その中国を無視して、どうやって、この資源のない島国が食っていくのか。
高市早苗首相に代表されるタカ派政治家が「中国何するものぞ」と気勢を上げるのは勝手だが、ビジネスの世界でそんな甘えは通用しない。緻密な戦略をもって対峙しなければならない。それを放棄して中国排斥や脱中国を叫ぶのは、自ら目と耳をふさいで衰退を受け入れると言っているに等しい。
実務派を追放した習主席の行き着く先
――日本の脱中国の動きは、中国側にも原因があります。習近平国家主席が率いる中国は権威主義的な傾向が強まっています。
改革開放を主導した最高指導者、鄧小平は賢明だった。彼が導入した「指導者は2期10年」のルール、そして「一国二制度」という仕組み。これこそが中国を世界の工場へ押し上げ、経済大国に引っ張り上げた最大のエンジンだった。
その結果、今では家電や自動車などだけでなくバッテリーや太陽光パネルなどでも圧倒的な競争力を持つに至った。指導者が代われば、国家に自浄作用が働く。ところが習は自らそのルールを破壊し、3期目(2023年~)に入っている。



















