トランプ関税の効果と決定の内側(中)立案者の1人は「最も過激な保護貿易主義者」で、もう1人は「貿易戦争のための青写真」を執筆

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そして今、ナバロは3月30日の『Fox News』のインタビューで「関税は減税であり、雇用であり、国家安全保障である」と語っている。さらに関税収入はトランプ大統領が減税を実施するのに十分な額になり、アメリカ国民が直面する物価上昇を十分に補うことができると主張している。

具体的には「自動車関税だけで年間1000億ドルの収入が見込まれ、他の関税収入と合計すれば毎年6000億ドルの収入、10年間で6兆ドルに達する」という。この収入を原資に「中産階級やブルー・カラーのためにアメリカ史上最高の減税を行う」と語っている。

CEA委員長ミランの「関税引き上げ擁護論」

伝統的に経済学界の大御所が就いてきた大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長に30代のスティーブン・ミランが就任したのは異例だった。ナバロと同様にハーバード大学で経済学の博士号を取得しているが、アカデミアで活動した経験はない。CEA委員長に就任する前は、右派のシンクタンクのマンハッタン研究所でシニアフェローを務めたり、財務省の経済顧問を務めたりしているが、目立った存在ではない。

彼がCEA委員長に抜擢されたのは、「A User’s Guide to Restructuring the Global Trading System」(Hudson Bay Capital, 2024, November)を発表したからである。「世界の貿易制度を再構築するユーザー・ガイド」とは極めて大胆かつ意欲的なタイトルである。

CEA委員長のスティーブン・ミランは高関税の悪影響はドル高が緩和と主張(写真:Stefani Reynolds/Bloomberg)

『Washington Post』は、この41ページの短い論文を「貿易戦争のための青写真」と呼んでいる(2025年3月25日、「The 41-page blueprint that may help explain Trump’s painful trade wars」)。

同記事は、「トランプ政権の経済担当アドバイザーの一人が関税と他の政策を組み合わせて、ブレトンウッズ体制に匹敵する新しい体制を構築する可能性を示す41ページの論文を書いた」と紹介している。そして、トランプ政権の通商・関税政策の手掛かりを求めて、多くの海外の銀行家、ウォール街のトレーダー、議員の補佐官などが、この論文を読んでいると、その反響の大きさを伝えている。

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