「戒厳令は憲法違反」尹錫悦大統領が失職、6月に大統領選挙が実施? 日本との関係も不透明化

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今回の事態で、ソウル市内をはじめ全国で与党、野党それぞれを支持する大規模集会も相次いで開かれた。保守と革新と二分論に陥りがちな韓国社会だが、その二分論が今回深まった。分断した社会をどう統合させるか、5月までには行われるであろう大統領選挙まで、韓国政治・社会は混乱を深めそうだ。

現段階で、次期大統領選挙日は6月3日が有力とされている。現在、次期大統領候補として人気が高いのは「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表だ。

与党・保守側では現政権で雇用労働相の金文洙(キム・ムンス)氏、「国民の力」前代表の韓東勲(ハン・ドンフン)氏など候補はいるが、支持率では李代表に大きく差を付けられている状況だ。

李在明代表の政治的立場も、実は危うい。2025年3月26日にはソウル高等裁判所が無罪を宣告したものの、1審で公職選挙法違反で有罪判決を受けた。逆転無罪判決は彼の政治生命に追い風となったが、李代表は他にも4件の刑事裁判を抱えている状況だ。今後有罪判決が確定すれば、10年の被選挙権剥奪となる。

日韓、米韓関係も不安定化

罷免された尹大統領も、内乱罪容疑で刑事責任を問われている。この容疑で1月15日に逮捕されていた。大統領失職に加え、さらに拘束される可能性もある。

前の文在寅(ムン・ジェイン)政権時代、歴史問題や安保問題などで悪化した日韓関係は、尹大統領になって劇的に改善した。これには「対日屈辱外交」という韓国国内での批判も強かったが、それでも日韓は政治・経済・安保面での協力を深めようとしていたときだった。

今回の罷免で日韓関係の先行きも不透明となった。仮に次期大統領選で李在明氏が当選した場合、李氏が日本に対して厳しい発言を行ってきたこともあり、現実的な対応ができるか、あるいは反日的な姿勢で日本に臨むかという問題も生じてくる。

また東アジアには米中対立や台湾有事、北朝鮮問題などの懸案を抱えている。さらにトランプ政権が本格始動となり、大統領不在のまま米韓関係がどうなるかを憂慮する声が非常に高い。関税をはじめ経済問題、さらには北朝鮮関係や在韓米軍など安保上の問題が山積している中で、「トランプ政権ときちんと向き合える政権がない」という状況は、韓国にとって重荷にならざるをえない。

トランプ流のディール次第で経済も、そして北朝鮮との関係もどうなるかという不安が大きいものの、韓国側の権力不在が今後どのような影響をもたらすかが不安要因として日増しにのしかかっている。

「東洋経済オンライン」では、特集「戒厳令ショック 激動の朝鮮半島の将来」で、戒厳令などで揺れる韓国の情勢を詳報しています。

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福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(以上、東洋経済新報社)など。

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