トランプ自動車関税は、中国以外で構築された繊細なサプライチェーンを破壊し、中国が自動車産業を支配する未来を招きかねない

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世界の自動車産業が中国に支配されていない未来を思い描いていたとしたら、その夢には別れを告げるべきだろう。

なぜなら、トランプ米大統領が26日発表した輸入自動車に対する25%の関税措置は、電気自動車(EV)サプライチェーンのうち、中国がまだ支配していないわずか部分を破壊してしまうからだ。

この関税措置が発動すれば、最大の敗者となるのは日本と韓国だろう。両国の自動車は米国に輸入される自動車の3分の1を占めており、北米以外からの輸入車に限れば、その割合は3分の2に達する。

 出所:ITC

日本と韓国はEVの開発にとっても極めて重要だ。両国の企業は昨年、世界のEVバッテリー全体の25%余りを生産し、中国がほぼ独占している市場に唯一対抗し得る存在になっている。一方で米国や欧州の企業は存在感が極めて薄い。今月に入ってスウェーデンのノースボルトが破産申請したことで、その傾向はさらに顕著になった。

製造業の雇用を米国に取り戻したいと考えているなら、このアジアの同盟国2カ国に打撃を与えるというのは奇妙なやり方だ。韓国は2023年、米国内のプロジェクトへの投資規模が215億ドルに上り、初めて最大の対米投資国となった。日本も過去数十年にわたって米国での投資を積み上げてきており、対米直接投資残高は2023年末時点で約7830億ドルと全体の約15%を占めた。

バイデン前米大統領が中国に依存しないクリーンエネルギーのサプライチェーン構築を推進したことによって、この関係は急速に加速していた。韓国のLGエナジーソリューション、サムスンSDI、SKオンの3社は、ミシガン州からジョージア州にかけて15カ所のEV用バッテリー工場を建設するため、計540億ドルの投資を約束している。リショアリング・イニシアチブによれば、2021年以降、米国への外国直接投資およびリショアリング(製造拠点の国内回帰)の約半分がEV電池関連だった。

ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード、ステランティスの各社は、それぞれ韓国の3社のうちいずれかと提携してEVバッテリーの生産を進めている。一方、テスラは日本のパナソニックホールディングスと協力している。もし米国の自動車産業が、経営幹部たちの主張するような電動化された未来を目指すのであれば、これらアジアの企業の成功が不可欠だ。

 出所:企業の報告、ブルームバーグ

新型コロナ禍とその後の混乱で明らかになったように、グローバルなサプライチェーンは極めて細い糸でつながっているにすぎない。今回の関税措置によって、トランプ氏はその繊細な糸の真ん中にモンスタートラックを突っ込ませたのだ。

韓国のバッテリーメーカーは、単に米国の自動車メーカー向けにカソードやアノードを製造しているわけではない。むしろ、輸出なしでは生き残りが難しい国内自動車産業と一体化している。現代自動車と起亜自動車は韓国よりも米国でより多くの利益を上げているが、両社の米国工場で組み立てられるのは、昨年に北米市場で販売した200万台のうちの3分の1程度にすぎない。

韓国と日本の自動車メーカーの利益が壊滅的な打撃を受ければ、そこから収益を得ているバッテリーメーカーも次に苦境に陥るだろう。これら企業の利益率は通常、良くても1桁台にとどまる。さらに、寧徳時代新能源科技(CATL)や比亜迪(BYD)など中国勢はコストパフォーマンスに優れ、EV業界で急速に普及しているリン酸鉄リチウムイオン(LFP)系バッテリーでもリードを広げつつある。BYDは先に、5分で充電可能なEVシステムを発表した。

 出所:ブルームバーグ

思慮に欠ける貿易制限は、仕掛けた側に必ずと言っていいほど手痛いしっぺ返しをもたらすものだ。トランプ氏が2018年3月に導入した鉄鋼・アルミ関税は、その年の終わりには米国に毎月46億ドルの追加コストや税収損失を発生させていた。オバマ政権が2012年に中国の太陽光パネルメーカーに課した関税は、中国側の報復措置を招き、米国企業がかつて市場を支配していた太陽光パネルの重要原料ポリシリコンの米国内生産を壊滅させる事態を招いた。われわれは今、再び同じシナリオが繰り返されるのを目の当たりにしようとしている。

トランプ氏にとって、バイデン政権の看板政策だったクリーンエネルギー政策の残骸を叩き壊すことは、むしろ意図したものなのだろう。トランプ氏がホワイトハウスに返り咲いて最初に行った行政措置には、自動車メーカーに電動化を促すルールの撤廃、EV充電設備への資金供給停止、排ガス規制の緩和などが含まれていた。

アナリストや米自動車メーカーの株主は、短期的にはこの変化を歓迎するかもしれない。電動化に向けて今後も必要とされる数十億ドル規模の設備投資や研究開発を縮小すれば、今後約3年間は投資家により多くの資金が還元されるだろう。保護貿易主義は、短期的な利益を上げるにはうってつけの手段だ。

しかし、それは長期的な競争に勝つための道筋では決してない。現在、世界の自動車産業が電動化へと進む中で、米国とその同盟国は大きく後れを取っている。トランプ氏は、中国以外で構築された繊細なサプライチェーンのつながりを破壊することで、中国が自動車産業を支配する未来を自ら保証しているようなものだ。

(デービッド・フィックリング氏はエネルギーと商品を担当するブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。ブルームバーグ・ニュースやウォールストリート・ジャーナル、フィナンシャル・タイムズでの記者経験があります。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Trump’s 25% Tariff Hands China the Car Industry: David Fickling(抜粋)

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著者:David Fickling

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