「たしか、自習室に行ったものの、気分が乗らずに早めに帰ってきた日だったと思います。珍しく日中勉強をせずに、日当たりのよい床に寝っ転がっていると、何がきっかけか分かりませんが、急に自分をメタ認知できた瞬間がありました。
『あれ、こんないい成績を取れているのに、もしかして、ずっと自分、落ちると思ってた?』と。思えば去年も、成績自体は悪くなかったのに、このネガティブ思考が不合格の原因になったのだと気づきました。それからは成績の裏付けもあって、ポジティブシンキングで過ごそうと思うことができました」
この日から、最初の1問が解けたら「私、すごい!」と自分を褒めちぎり、模試が終了した後は「これは絶対に京大に受かるわ」と本気で思えるようになった彼女は、浪人生活がだんだん楽しくなりはじめたことで、さらに成績が上がり、秋の京都大学の冠模試で1位を獲得することができました。
「神様がくれた3点」で京大に合格
こうして臨んだ2度目の京都大学農学部の受験。しかし、残念ながら本番では実力を発揮できず、合格発表の日までは何も手につかなかったそうです。
「センター試験では前年度と同じくらいの点数でこけてしまったのですが、『ここで落ち込んだら去年と同じだ』と気持ちを奮い立たせて臨みました。でも京大2次試験でも手応えがなくて絶対に落ちたと思って、もう併願で合格した私立大学に進もうと思っていましたね。
合格発表の時間になってもすぐに結果を見なかったのですが、母親が『番号あったよ!』って教えてくれて信じられない気持ちでした。前の年に妹が合格したときは、私が落ちたので家族もみんな複雑だったと思いますが、このときは妹も母も祖母も、家族みんなで祝ってもらえたのでよかったです」
合格最低点からわずかにプラス3点というギリギリの合格だったそうで、「数学の問題で1行だけ消すか悩んで、ここで消していたら合格はなかった」と彼女は振り返ります。
「神様がくれた3点でしたね」
こうして、トコトコさんの浪人生活は終わりました。
京都大学農学部に入った彼女は、山仕事サークルの代表をしながら外部のNPOに出入りしたり、森林組合の現場作業員をしたりと、精力的な活動に励み、1年の休学を経て食品メーカーに就職しました。

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