ただ、これら上位企業は人数こそ多いが、比率はいずれも1ケタ。今回紹介した69社の中でも比率10%を超える企業は13位ベネッセホールディングス25人(27.1%)、30位ファンケル10人(18.2%)、同じく30位クレディセゾン10人(15.4%)、35位資生堂8人(14.8%)とわずか12社にすぎない。それも多くが10%台。まだまだ「女性活用が進んでいる」とは言いにくい状況だ。
これまで大手企業の女性活用の取り組みは育児休業取得や時短などワーク・ライフ・バランスが中心だった。『CSR企業総覧』には各社が行っている勤務柔軟化の諸制度や両立支援制度を掲載しているが、大手企業の制度の充実ぶりは際立っている。
こうした効果もあり、大手では出産などでの退職は減り一般社員の女性数は増加している。今後はこの層からいかに管理職を育てていくかが課題になる。
その際に重要とされるのが目標となる「ロールモデル」の存在だ。1つ上の役職にお手本になる先輩がいることが女性の昇進意欲を高めると言われる。
ただ、人によってロールモデルは異なる。「家庭とのバランスをとりながらも成果を上げていく」。「やりがいのある仕事をプライベートを多少犠牲にしてもガンガンこなしていく」などさまざまな働き方があるだろう。
そのためにも同じタイプでない多様な働き方の女性管理職が増えていくことが必要である。「自分もこの人のような働き方でやってみたい」と後輩が思い実践していくことで、さらに多様な働き方に進化していくことが期待できる。
こうした多様な人材の存在が幅広い考え方を生み出し、それが競争力アップにつながれば日本企業はさらに成長していけるだろう。ダイバーシティの最終目標は業績面などを含めた「強い企業」を作ること。現時点での女性活用はまだそのレベルまで達していない。各社の取り組みはこれからが本番といえそうだ。
(岸本吉浩 =東洋経済オンライン)
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