
一方でカーブに入ると、面白いように、ノーズが内側に入り、素早く走り抜けることができる。フェラーリの面目躍如たるところだろう。エンジン音と排気音は昨今の騒音規制をクリアするため、低めに抑えられている。それでも、ほかでは体験できない、高音から低音まで広い音域で、粒ぞろいという感じの快音が奏でられるようチューニングされている。海沿いの道を流すには、最高のバックグラウンドミュージックだ。
12チリンドリ・スパイダーのルーフ部分は、ソフトトップでなく、ハードトップだ。それが折りたたまれてキャビン背後に収納される。なぜソフトトップを選ばなかったのか、エンジニアに質問をしたところ「クーペと共通するスタイリッシュさを演出するためです」という答えが返ってきた。
「もうひとつは、車内の快適性のためです」と、エンジニアはつけ加えた。フロントエンジンの12チリンドリは、サーキット用のスポーツモデルというより、高速で快適に遠くまで出かける人に評価されるグランツーリズモなのだ。
大排気量+フロントエンジンレイアウトの妙

「フェラーリが手がけるモデルはどれも、スポーティさと、ピュアなアグレッシブさを特徴としています。そこにあって、先に市場投入した12チリンドリと、今回の12チリンドリ・スパイダーは、そのパフォーマンス性に快適性を加えたところに特徴があり、デザインはそれをうまく表現してくれていると思います」
発表されたときに、かつての365GTB/4および同GTS/4、通称「デイトナ」(1968年)を彷彿させるボディスタイリング(とくにフロント)などとも言われただけあって、12チリンドリは、フロントエンジンで後輪駆動という伝統的なレイアウトを持つ。
素直な操縦性は、後輪駆動スポーツカーの長所だ。それが12チリンドリ・スパイダーでもちゃんと感じられた。
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