この子を残して死ねない――国会でがん患者の声を紹介 なぜ「高額療養費制度」が見直されることになり、そして見送りになったのか

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このまま実施されることは、どうしても避けなければならない。

「そこで、まず当事者の声を集めることにしたのです」(天野さん)

1月中旬、全がん連がオンラインで3日間の緊急アンケート調査を実施したところ、3623人の回答からは、患者の切実な生活状況が明らかになった。がん患者だけではなく、不妊症や関節リウマチ、乾癬、重症の喘息などの患者も高額療養費制度を利用している。

今以上に治療費がかかるなら

たとえば、関節リウマチでは遺伝子組み換え技術を用いた生物学的製剤が使われている。だが、この生物学的製剤はたいへん高価であり、高額療養費制度を頼る患者が多い。

アンケートでは「リウマチは完治する病気ではないため、寛解を目指し長い治療期間を要します。実際に自分も治療費が負担になっていますし、将来子どもが欲しいと考えていますが、今以上に治療費がかかるなら子どもを授かっても治療しながら生活していけるか、不安でなりません」といった訴えもあった。

「結果的に、このアンケートがことの深刻さを現し、国会議員やマスメディアの心を動かしました」(JPA事務局長 大坪恵太さん)

アンケートの回答は511ページ、厚さ約2.5センチの冊子に綴じられた。

全がん連は国会開始前から議員に説明しながら手渡した。議員を訪問するたびに、街の印刷店で何度も冊子づくりをした。

1月29日からは全がん連とJPA、慢性骨髄性白血病患者・家族の会いずみの会(以下、いずみの会)共同で署名運動を開始した。それはSNSでも拡散され、最終的には13万5000筆以上が集まり、6冊に綴じられた。

衆議院予算委員会が始まってからは、全がん連、JPA、いずみの会メンバーが連日、国会に通い、傍聴席で与野党議員の質疑を見届けた。

連日、メディアで取り上げられるようになった2月、ようやく厚労省が動いた。全がん連とJPA、いずみの会との面談が、厚労大臣をも含めて4回設定され、長期療養患者に対する支払い制度(多数回該当*1)の据え置きが表明された。

医療界も続いた。日本ソーシャルワーカー連盟のほか、がん治療に関わる学会、東京都医師会からも声明が相次いだ。緊急シンポジウムやSNSなどでは、公衆衛生や医療経済の専門家からの意見が発信された。

それでも衆議院予算委員会では、石破首相から「今年8月からの負担額引き上げは予定通り行う」との方針が伝えられた。

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