この子を残して死ねない――国会でがん患者の声を紹介 なぜ「高額療養費制度」が見直されることになり、そして見送りになったのか
マイクの前に立ったのは、一般社団法人全国がん患者団体連合会 (以下、全がん連)理事で、認定特定非営利活動法人希望の会理事長の轟浩美さんだ。
轟さんは、10年前に夫の哲也さんをスキルス胃がんで亡くしている。その遺志を継いで、がん患者や家族の支援、患者の声を医療に反映させる活動をしてきた。厚生労働省(以下、厚労省)がん対策推進協議会などでは委員も務めた。とはいえ、超党派全会一致で一般人を参考人招致するのは、きわめて珍しい。
要望書を出すもゼロ回答
高額療養費制度とは、医療費が高額になった場合は年齢や年収に応じた「自己負担の上限額」があり、それを超えた金額が申請によって払い戻されるしくみのこと。医療費が家計を圧迫しないよう、セーフティネットとして法律で定められている。
今回、その上限額の引き上げが決まっていた。
2024年12月、高額療養費制度の政府案の全容を見た、全がん連の天野慎介理事長は、上限額の引き上げ率の高さに驚愕した。
そこで、全がん連は翌日の12月24日に、一般社団法人日本難病・疾病団体協議会(以下、JPA)は同月27日に、厚労大臣などに宛てて要望書を提出した(※外部配信先では閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。
だが、同時期に加藤勝信財務大臣と福岡資麿厚労大臣との折衝で、本案はすでに決まっていたため、1月になってもゼロ回答だった。

全がん連は「がんになっても、安心して暮らせる社会づくり」を目指し、全国の患者団体が集まって政策提言を行う団体だ。これまでも、がん対策基本法、がん登録推進法、受動喫煙防止法、ゲノム医療推進法などでロビイング活動をしてきた実績がある。
JPAは難病や慢性疾患の患者家族会103団体が加盟する全国組織で、これまで国の難病対策や社会保障制度のあり方に対して、さまざまな提言や提案をしてきた。

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