「自分のことで忙しい」人が結婚する3つの条件 53歳新婚さんが結婚するまでの長い軌跡

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浩二さんも麻子さんも会社では責任のある立場で働いている。さらに浩二さんは趣味、麻子さんは資格勉強を優先するのであれば、恋愛にあてる時間は少なくなってしまうのは当然だ。出会ってから3年半という歳月は、この2人にはお互いを知るために必要な期間だったのかもしれない。

結婚のきっかけは「資格合格とハワイ」

動きがあったのは昨年の夏だった。麻子さんは3回目の挑戦で資格試験に合格を果たした。浩二さんは勤続30年の恩賞として勤務先から海外旅行をプレゼントされた。希望の行き先はもちろん、サーフィンのメッカであるハワイである。

「でも、サーフィンは1日に3時間もやれば十分です。海外では時間を持て余してしまいます。この際、彼女も一緒にサーフィンをやったらどうかな、という話がきっかけで結婚話も進みました」

その年の冬には麻子さんが借りていたマンションが契約更新を迎えたため、それを機に結婚を前提に同棲を始めることになった。資格合格、ハワイ旅行、マンションの更新……。はたから見ると小さなことに感じるが、本人たちからすると「大きな区切り」なのだ。長年にわたって独身生活に慣れ親しんできた晩婚さんにとっては、結婚に向かうエンジンは多ければ多いほどよい。

「一緒に住んでみると、割と楽しいなと思いました。女性が家にいると雰囲気が柔らかくなるんですね。仕事から帰って話をしたり、一緒にテレビを見ながらくつろいだり。笑いのツボも似ています。趣味の時間が減ることが心配でしたが、今のところは3割減で済んでいます。サーフィンの後にスーパー銭湯に行くことができなくなったぐらいですね」

結婚願望はありながらも、人生における「結婚」の優先順位は低い。浩二さんや麻子さんだけなく、筆者を含めた多くの晩婚さんに共通する姿勢なのだと思う。人としてどうなのか、としかられると返す言葉もないが、しかられたからといって価値観や行動を変えられるわけでもない。

浩二さんと麻子さんのケースを観察すると、少しの勇気(お見合いパーティーに参加する)と努力(メールしてデートに誘う)、そして縁(資格合格とハワイ旅行のタイミングが一致)の3つがそろったときに結婚が近づいた。浩二さんに限って言えば、仕事と趣味で完結していた生活から一歩だけ外に出る勇気を持ったことがすべての始まりだったのだ。

取材協力:東京世話焼きおばさんの縁結び

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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