真の才能は「狂気に満ちた集中」から生まれる

IT時代にこそ「真価を発揮する才能」とは?

不思議だなあと思って、先日、同じ担当者に「あれは何なんだろうね?」と聞いてみた。すると、彼らの説明によると「ロクの世界」は、長年アニメーション業界で働いていた高尾圭さんというアニメーターが独立し、ピクサーやジブリ、あるいは既存のアニメーションとは違うロジックと手法を打ち立てようと、ほとんど独力で、途方も無い時間と労力をかけた作品なのだというんですね(参考:STUDIO UGOKISTUDIO UGOKIのキャラクター表現について)。

上記のページによると、それはMulti Perspective(マルチパース)という手法らしいのですが、専門的なことについては、僕が説明するよりも、上記のページをご覧になったほうが早いでしょう。

僕がいいたいことは、それほど専門的で、素人には理解する手がかりすらないようなこだわりであっても、体のレベルでは、アニメの素人である僕に確実に伝わっていた、ということ。たった1回だけ観た20数分のアニメを1年半も経っても覚えている、というのはそういうことだと思うんです。

おそらく、「ロクの世界」のプロジェクトはまだ経済的に報われているとはいえないでしょうし、アニメ業界での評価も十分なものとはいえない状況でしょう。でも、そうやって評価を受けていない段階で、高い集中力をもってひとつの作品を作り上げていることの中にこそ「本当の才能」の萌芽があり、そこにこそ、新しい時代を切り開いていく「可能性」が宿ってくるのだと僕は思うんです。

誰からも見出されない「助走期間」も必要

飛行機作りに邁進するライト兄弟の集中力は、おそらく、周囲からすれば狂気にしか見えなかったことでしょう。しかし、その狂気に満ちた集中の中から、彼らは人類史を変えるような物を作り出したわけです。

もし、現代の若者の不幸があるとすれば、「時を忘れて没頭する」という体験を奪われがちである、ということがいえると僕は思います。これは、現代のカリキュラム主導の教育の、最大の欠点といっていいでしょう。確かに、知識やスキルを身につけるだけなら、カリキュラムをどんどんこなしたほうがいい。でも、いくら高い知識やスキルを身につけたところで、「時を忘れて没頭する」という体験が欠けていれば、人は本当の「才能」を伸ばすことができないのです。

もちろん、知識やスキルが無価値とはいいません。しかし、こと「才能」という観点だけでいうのであれば、そういったものに執着することは危険といえるのです。才能の芽を、無闇に摘んでしまっている可能性がある。

未来において価値を産むのは「現在においてその価値が未確定なもの」だけです。言い換えれば、本当の才能には、「誰からも才能を見出されない助走期間」を必要とするのです。

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