真の才能は「狂気に満ちた集中」から生まれる

IT時代にこそ「真価を発揮する才能」とは?

私たちはエジソンが作った電球や、ライト兄弟が作った飛行機や、スティーブ・ジョブズが作ったiPhoneのすばらしさを理解することはできます。しかし、それらを生み出すもとになった彼らの「感性」や「感覚世界」そのものについては、ほとんどといっていいぐらい、理解も、共感もできていないのです。

僕はそういう、周囲の理解も共感も必要としないような感性や感覚世界こそが、「才能」というものの本質ではないか、と思うのです。

周囲の誰もがすぐに理解し、賞賛するような才能というのは、いってしまえば「手垢がついた才能」です。それは過去にあった、何かの焼き直しである可能性が少なくない。本当に新鮮で、新しい世界を切り開いていくような才能は、周囲からはなかなか「才能」とは認識されないものなのです。

「才能の芽」を摘まないために

本当の才能は、それがどんな価値を持つものなのか、開花したあとでないと評価しようがないものである。しかし、だとすれば私たちはどうやって、それを見いだし、伸ばしていけばいいのでしょうか。

まだ価値があるか、ないかわからない何か。それを「才能」と認めるにはどうしたらいいか。これは難問です。一筋縄で解けるような問題ではありません。しかし、少なくとも心理学的に、僕が「鍵」となると考えるものがあります。それは「集中」です。ひとりの人間が全身全霊で何かに集中しているその瞬間。そこに、その人だけの「才能」が宿る。少なくともその可能性がある、と僕は考えているんです。

たとえ周囲から評価されていなくても、高い集中力を持って行われている仕事には可能性があります。そのことで思い出すのが、『ロクの世界』というアニメーションです。発売当初、僕は担当編集者から「ぜひ騙されたと思って見てください」とDVD付書籍を渡されました。そのDVDには、だいたい20数分程度の、アニメーションが収録されていました。

観てみると、ストーリーとしては、荒野を舞台とした、ひとりの少女と少年が、「ロク」と言われる謎のブロックをめぐって繰り広げる冒険譚でした。最初の印象は、正直なところ「普通」でした。もちろん、ピクサーやジブリ、あるいは日本の、クオリティの高いテレビアニメを見慣れている目からみて「普通」に感じるというのはめちゃくちゃレベルが高い、ということなんですが、それでも特に印象的だったわけではなかった。

ところが、この20数分ほどの映像体験が、1年半以上経った今でも、どういうわけか「フッ」と思い起こされる瞬間があるんです。

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