アマゾンの動画配信は、非常識の塊だった 「プライムビデオ」が他社サービスと違う理由

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高画質という点では、この手のボックスで4K対応というのは珍しい。筆者の知る限り、世界初ではないかと思う。ただ日本国内では4Kテレビの市場成長率は500%もの高水準であり、米国でも400%であることから、やがて多くの人が4Kが当たり前になる世界は見えている。鶏が先か卵が先か論は、もう抜けたと言っていいだろう。明らかに「次はコンテンツの番」なのだ。

プライムビデオでも4Kコンテンツを用意しているが、まだドキュメンタリー作品ぐらいで、キラーコンテンツは見あたらなかった。プライムビデオの4Kコンテンツが視聴できる機器は、今のところこのFire TVだけしかない。HD解像度であれば、ゲーム機やスマホでも見られるが、こと4Kに関してはオンリーワンで、しばらくこの状況は続くだろう(米国にはサードパーティ製STBで1つだけ4Kで視聴できるものがあるという)。

出現するのはただのストリーミングサービスだが…

先日ローンチしたNetflixが、4K視聴はNetflix対応テレビでしかできないのに比べると、1万円程度の機器で4Kが見られるのならば、間口はかなり広い。会員ならFire TVは買っておいて損はないだろう。もし4Kテレビがないのであれば、アマゾンできっと買うことになるわけだ。この点でも抜かりがない。

若干気になる点としては、現場で4Kコンテンツを視聴させていただいたが、残念ながら4Kの解像感を感じさせるようなものではなかったということだ。製品発売時にはもう少しクオリティが上がるのか、その辺の判断はまだ保留にしておきたい。

音楽にしても映像にしても、ここに来て海外からのストリーミングサービスが立て続けに日本市場に参入し、急ににぎやかになってきている。その中でもプライムビデオは、サービス料金を別途取るのではなく、すでにプライム会員なら事実上無料という点が、他社サービスとは大きく異なる。

プライム会員で利用しないという頑な人はそう居ないだろうし、料金がかかっていないため、酷評もないだろう。それがクチコミで拡がり、プライム会員が増えれば、アマゾンとしても利益となる。

出現するのはただのストリーミングサービスだが、ビジネスモデルが全然違うというところを頭に入れておくと、今後のアマゾンの動きも納得できるところが出てくるのではないだろうか。

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小寺 信良 映像技術者、コラムニスト

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こでらのぶよし / Nobuyoshi Kodera

コラムニスト/映像技術者/インターネットユーザー協会代表理事。1963年宮崎県出身。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、ライターとして独立。AV機器から放送機器、メディア論、子供とITの関係まで幅広く執筆活動を行う。主な著書に「Ustreamがメディアを変える」(ちくま新書)、「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)など。WEBではAV Watch、ITmedia、価格.com にてコラムを好評連載中。夜間飛行より毎週金曜、メールマガジン「金曜ランチボックス」を発行中。

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