ヨドバシにはアマゾンと競える潜在力がある <動画>「店頭」を使ってネットを成功させた

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公式通販サイト「ヨドバシ.com」での売り上げを順調に伸ばしている、大手家電量販のヨドバシカメラ。同社の成功は「ネットと店頭はまったく一緒」という独自の考え方に起因している、と、夏野剛氏は話します。

 

ヨドバシカメラの大進撃が止まりません。一方で家電量販店業界は今、ものすごく経営環境が厳しくなっています。ヤマダ電機が一気に数十店舗閉鎖するなど、量販店というスキーム自体が崩れつつあるのですね。

ヨドバシカメラが「店頭」のあり方を変革しようとしています(撮影:風間仁一郎)

危機に陥っている最大の理由は、「量販店が必ずしもいちばん安いわけではない」というのがネットでバレてしまったことでしょう。

量販店は長らく、大量に仕入れて大量に販売することで価格を安くしてきたわけですが、その価格を安くするために、ほかにもいろいろな努力をしてきました。その策の一つは、ネットでバラ売りしないという戦略だったのですね。大量仕入れ大量販売なので、すべての商品をそろえるのではなく、売れ筋の商品だけを仕入れ、それを店舗で売ると。

だから、家電量販とネットはビジネスモデルが真逆だ、ネットで売れるようなロングテール型の商品は量販店に向かないのだ、と言われてきて、どの会社もネットの商売に本格的には手を出して来なかったのです。

ヨドバシ方式が消費者にもたらすメリットは?

この記事は週刊『夏野総研』とのコラボレーションでお届けします

しかしネットの世界を見ると、今は大量に仕入れたものをネット上で分散して売るようになっているので、結局店舗よりネットのほうが品揃えがいいうえに、安かったり、ほとんど値段が変わらなかったりするのですね。

これにいち早く気がついたヨドバシは、徹底的に「ネットと店頭はまったく一緒である」というサービスをどんどん開発してきました。実はこれ、消費者にとって大きな価値があります。

なぜかというと、やはり家電とかガジェット類というのは、実物を見てから買いたい。実物を見て、同じものの色違いがほしいと思ったときに、しかし店頭にはなかったりする。そのときに「じゃあここで、スマホで注文してください、すぐ倉庫から届けますので」ということができます。

すると、翌日には倉庫から自宅に商品が直接届くわけです。この方法なら、量販店の店頭で配送を依頼するよりずっと早く届くんですね。しかも人の手を介さないので、その分の時間も節約できる。

これこそ、あらゆる量販店がもっと早くから目指すべき道だったのではないかと、僕は思います。今やヨドバシはアマゾンに対抗できる数少ない日本の最大手企業になっているのではないでしょうか。

こういう英断を、小売りの皆さんはしていくべきです。ヨドバシの判断は、それを大きく示唆していると思います。がんばれ、ヨドバシ。

夏野 剛 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授

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なつの・たけし

早稲田大学政治経済学部卒業、東京ガス入社。米ペンシルベニア大学経営大学院ウォートンスクール卒(経営学修士)。NTTドコモでiモードの立ち上げに参画。執行役員マルチメディアサービス部長を務め、08年に退社。現在は慶應義塾大学政策メディア研究科特別招聘教授のほか、ドワンゴ、セガサミーホールディングス、ぴあ、トランスコスモス、DLE、GREEの取締役を兼任。経産省所轄の未踏IT人材発掘・育成事業の統括プロジェクトマネージャー現任。ダボス会議で知られるWorld Economic Forum の“Global Agenda Council”メンバーでもある。


 

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