海外記者が考える「伊藤詩織映画」争点の落とし所 プロデューサーが日本向けに修正を約束した中身とは?

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しかし、3月3日のアカデミー賞で伊藤詩織の名前が発表されても、日本社会がそれを祝福することはなかった。昨年10月以降、このドキュメンタリーの日本での公開は、伊藤詩織の元弁護士からの無許可映像使用に関する疑義によって実現に至っていない。

西廣陽子弁護士と彼女の支持者たちは、このドキュメンタリーが、伊藤詩織が法廷でのみ使用すると約束した防犯カメラ映像を使用していること、そして彼女の物語に登場する重要な人物の映像が無許可で使われていることに不満を抱いている。事件を担当する警察官、その夜ホテルまで2人を運んだタクシー運転手、性暴力について集まって議論する女性たち、そして西廣弁護士自身だ。

どの点が修正されるのか?

『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』のプロデューサーであるエリック・ニアリは言う。

「われわれは、西廣弁護士と彼女のサポーターの懸念に対応するため、日本向けバージョンを作成した。ただ防犯カメラ映像については、非常に重要な公益的資料として、ドキュメンタリーに残すしかない。この重要な部分を除き、警察官の声はより認識できないように変更されている。

タクシー運転手の顔と声も認識できないようにした。女性たちのセッションは、同意していない人は誰もわからないように再編集されている。西廣弁護士については、撮影中に録音された音声のうち、彼女の承諾を得るべき部分が削除されている」

『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』は、この事件が警察と検察当局によってどのように処理されてきたかを語るうえで非常に重要である。争点となっている防犯カメラ映像は、加害者側にとって極めて不利な証拠である。

そこには、完全に酩酊した彼女がその夜、加害者にタクシーから引きずり降ろされる姿が映っている。あの夜、伊藤詩織に判断能力がなかったこと、そして彼女が本当に性暴力被害を受けたことを誰もが納得するのに十分なものだ。

伊藤詩織 ブラック・ボックス・ダイアリーズ
指摘された問題点について修正した内容を語ったプロデューサーのエリック・ニアリ氏(右)(写真:REX/アフロ)
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