政府を信じられない先進国の国民たち--リチャード・カッツ 本誌特約(在ニューヨーク)
政府が日本の債務状況を欧州のそれと比較するのを国民が信用しないのは、実は正しい。日本は、経常黒字を維持しているかぎり、債務の財源を手当てできる。外国から巨額の資金を借りねばならない欧州の国々とは異なり、資本逃避への脆弱性をさらすことにはならない。
日本より深刻な米国の政府不信
昨年12月に朝日新聞が実施した世論調査では、有権者の80%が政治制度に不満を抱いていると回答した。原子力発電を継続すべきかどうかも含めて、国の政策に関する国民投票の実施に賛成したのは70%に上り、首相を直接選挙で決めることを支持した割合も70%に達した。「国民の意見が政治的な決定に十分に反映されている」と思っている回答者は皆無、「ある程度反映されている」との回答も12%にすぎなかった。
自民党は、野田政権を倒し、総選挙に持ち込むため、国会審議の拒否をちらつかせ、予算財源の約半分を賄うのに必要な赤字国債の承認を拒否しようとしている。だが、この戦術は、自民党の支持率向上につながっていない。
朝日新聞の世論調査によると、回答者の80%(自民党の支持者では62%)が、「自民党の戦術を支持しない」と回答した。それでも自民党は、自らの戦術がもたらす行き詰まり状態は、より大きな打撃を政権党である民主党に与える、と信じ込んでいる。こういった駆け引きそのものが、民主主義はよい結果をもたらす、という信頼をむしばんでいるのである。