政府を信じられない先進国の国民たち--リチャード・カッツ 本誌特約(在ニューヨーク)
信頼の欠如に悩まされているのは政党だけではない。多くの組織が同様の問題を抱えている。組織の信頼度に関して、昨年9月に公益財団法人新聞通信調査会が実施した世論調査によると、「政党を信頼している」と回答したのはわずか12%、78%は「信頼しない」と回答した。国会については、「信頼する」が20%、「信頼しない」が66%。政府機関については、「信頼する」はわずか25%、「信頼しない」が57%。裁判所については61%、検察については47%が「信頼する」と回答した。メディアへの信頼度は67%と高く、病院への信頼(75%)に次いで2番目に高かった。
こうした問題に直面しているのは、日本だけではない。米国では信頼の欠如がもっと深刻だ。20世紀中頃には、米国人の70%が、政府はほぼつねに正しいことをする、と信じていたが、その比率は現在15%にまで低下している。昨年のギャラップ世論調査では、議会を「大いに」または「かなり」信頼しているのはわずか12%、大企業は19%、新聞は28%、公立学校は34%と、軒並みかなり低い結果となった。
もう一つの問題は、「パニックを避ける」という理由から、多くの場合、当局が真実を隠蔽または過小視するということだ。例を挙げるなら、1990年代に金融危機が起こったとき、当時の大蔵省はその深刻さを国民に伝えなかった。経済産業省は、福島第一原発でのメルトダウンの可能性を暴露したスポークスマンを即座に交代させた。
だが、このような理由で真実を知らされないと、人々はかえって疑心暗鬼に陥る。ある友人が肝臓に異常があって入院した際、医者ががんではないと言って安心させようとしたため、その友人はとても不安になったという。医者が真実を語っているのかどうか、わからなかったからだ。今その友人は元気だが、日本の政治・経済は今も元気がない。
Richard Katz
The Oriental Economist Report 編集長。ニューヨーク・タイムズ、フィナンシャル・タイムズ等にも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。当コラムへのご意見は英語でrbkatz@orientaleconomist.comまで。
(週刊東洋経済2012年2月18日号)
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